※この歌集は紫式部の晩年の自選である。生涯の歌集を編むにあたり娘時代のうたから始めている。
※ 頭の番号が註釈にリンクしてます。
原文 | 現代文 |
はやうよりわらは友だちなりし人に、年ごろへて行きあひたるが、ほのかにて、十月十日のほど、月にきほひて帰りにければ、
0001 めぐり逢ひて見しやそれともわかぬまに 雲がくれにし夜はの月かな |
幼い頃から友達だった人に、久しぶりに会ったが、わずかの間で、十月十日ころ月と競うように帰ってしまわれたので、
0001久しぶりに会って十分お話もできぬ間に夜半の月が雲隠れするように行ってしまったのね |
その人、とほき所へ行くなりけり。秋の果つる日きたるあかつき、虫の声あはれなり。
0002 鳴きよわるまがきの虫もとめがたき 秋の別れや悲しかるらむ |
その幼友達は、遠方の任地へ行くのだった。秋も終わろうする頃、暁の虫の声があわれだった。
0002 籬に弱々しく鳴く虫も、あなたを引き止められない わたしと同じ 秋の別れは悲しいのだろう |
「箏の琴しばし」と書いたりける人、「参りて御手より得む」とある返り事に、
0003 露しげきよもぎが中の虫の音を おぼろけにてや人の尋ねむ |
「箏の琴しばらく借りたい」と書き寄こした人、「参上して直接習いたい」とある返事に、
0003 露が濃くよもぎの茂るなかで鳴く虫の音を聞かんとしてわざわざ尋ねてが来る人がいるでしょうか。酔狂なお方ね。 |
方違へにわたりたる人の、なまおぼおぼしきことありとて、帰りにけるつとめて、朝顔の花をやるとて、
0004 おぼつかなそれかあらぬか明けぐれの そらおぼれする朝顔の花 |
方違えに来た人が、わけのわからないことをして、帰るその早朝に、朝顔の花をやろうとして、
0004 どうもよくわかりません その方なのか誰なのか うす暗い早朝にぼんやり咲いた朝顔の花のようなとぼけた顔をして |
返し、手を見わかぬにやありけむ、
0005 いづれぞと色分くほどに朝顔の あるかなきかになるぞわびしき |
返歌は、筆跡で分からなかったのだろうか、
0005 どちらの筆跡か迷っているうちにしおれてしまった朝顔の花 |
筑紫へ行く人のむすめの、
0006 西の海を思ひやりつつ月見れば ただに泣かるるころにもあるかな |
筑紫へ行く人の娘が、
0006 西の海を思いつつ月見れば ただ泣きたくなる頃です |
返し、
0007 西へ行く月の便りにたまづさの かき絶えめやは雲のかよひぢ |
返歌、
0007 雲の通い路を通って西へ行く月にことづける手紙の絶えることはないでしょう |
「遥かなる所に、行きやせむ、行かずや」と、思ひわづらふ人の、山里より紅葉を折りておこせたる、
0008 露深く奥山里のもみぢ葉に かよへる袖の色を見せばや |
「遠い地方に、行こうか行くまいか」と思い煩う人の、山里から紅葉を折って寄こして、
0008 露深く奥山里のもみじ葉に 似てしまった袖の涙の色をお見せしたい |
返し、
0009 嵐吹く遠山里のもみぢ葉は 露もとまらむことのかたさよ |
返歌、
0009 嵐吹く遠山里のもみじ葉は、露も留めないように、あなたも都に留まることは難しいでしょう |
又、その人の、
0010 もみぢ葉を誘ふ嵐は早けれど 木の下ならで行く心かは |
またその人の返歌
0010 もみじ葉を誘う嵐は強いですが木の下でなければ行きたくありません。 |
もの思ひわづらふ人の、うれへたる返り事に、霜月ばかり、
0011 霜氷り閉ぢたるころの水茎は えも書きやらぬ心地のみして |
物思いにわずらう人の、嘆きを訴える返事に、霜月なので、
0011 霜が凍り流れを閉ざすころの水茎ではうまく書けない気がします |
返し、
0012 行かずともなほ書きつめよ霜氷り 水の上にて思ひ流さむ |
返歌、
0012 たとえ筆が進まなくてもやはりお考えを書いてください 便りによってわたしの霜氷に閉ざされた胸の思いも晴れることでしょう。 |
賀茂に詣うでたるに、「ほととぎす鳴かなむ」と言ふあけぼのに、片岡の木末をかしく見えけり。
0013 ほととぎす声待つほどは片岡の 森の雫に立ちや濡れまし |
賀茂神社に詣でて、「ほととぎすが鳴いてほしいね」と言っていると曙に、片岡の木々が趣があった。
0013 ほととぎすの鳴く声を待つ間 片岡の森の雫に立って濡れていましょう。 |
弥生の朔日、河原に出でたるに、傍らなる車に法師の紙を冠にて、博士だちをるを憎みて、
0014 祓へどの神のかざりのみてぐらに うたてもまがふ耳はさみかな |
弥生の朔日、賀茂の河原に出ると、傍の車に、法師が紙の冠をかぶって陰陽博士のように振舞っていたのを、憎んで、
0014 祓の神飾りの幣にそっくりな紙冠の耳はさみだこと |
姉なりし人亡くなり、又、人のおとと失なひたるが、かたみに行きあひて、「亡きが代はりに思ひ交はさむ」と言ひけり。文の上に姉君と書き、中の君と書き通はしけるが、おのがじし遠きところへ行き別るるに、よそながら別れ惜しみて、
0015 北へ行く雁の翼に言伝てよ 雲の上がきかき絶えずして |
姉が亡くなって、別に妹を亡くした人が、互いにお会いして、それぞれ亡くした人の代わりと思いましょうと言い交した。文に姉上と書き、次妹と書いていたが、お互いが遠方へ行かなければならず、離れ離れになって、別れを惜しみ、
0015 北へ行く雁の翼に言づけてよ、雲のうわがきを絶えさせないでください |
返しは、西の海の人なり。
0016 行きめぐり誰れも都に鹿蒜山 五幡と聞くほどのはるけさ |
返歌は西の海の人から
0016 行きめぐって誰もが都に帰ろうとするそれはいつのことか互に遠くなりましたね |
津の国といふ所よりおこせたりける、
0017 難波潟群れたる鳥のもろともに 立ち居るものと思はましかば |
難波の津の国から文を送ってきた
0017 難波潟に群れる水鳥のように、あなたと起居を共にしていると思いたい |
返し、
欠 二行空白 |
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筑紫に肥前といふ所より、文おこせたるを、いとはるかなる所にて見けり。その返り事に、
0018 あひ見むと思ふ心は松浦なる 鏡の神や空に見るらむ |
筑前の備前という所から来た文を、遠い越前の地で見て、その返事に、
0018 あなたに会いたいと思う心は、松浦に鎮座する鏡神社の神が空からご覧でしょう。 |
返し、又の年もてきたり。
0019 行きめぐり逢ふを松浦の鏡には 誰れをかけつつ祈るとか知る |
返歌は、翌年になってきた
0019 行きめぐって再びお会いしたいと松浦の神に祈っています、誰にお会いしたいと祈っているかご存じですか。 |
近江の湖にて、三尾が崎といふ所に、網引くを見て、
0020 三尾の海に網引く民の手間もなく 立ち居につけて都恋しも |
琵琶湖の三尾が崎というところで、網を引くのを見て、
0020 三尾の海で網を引く漁師の手を休める暇もなく立居続けて働くのを見るにつけ都が恋しい |
又、磯の浜に、鶴の声々鳴くを、
0021 磯隠れ同じ心に田鶴ぞ鳴く なに思ひ出づる人や誰れそも |
また、磯の浜というところで、鶴がなく声をきいて、
0021 磯のもの陰でわたしと同じく泣いている鶴は誰を思って鳴いているのだろう。 |
夕立ちしぬべしとて、空の曇りてひらめくに、
0022 かき曇り夕立つ波の荒ければ 浮きたる舟ぞしづ心なき |
夕立ちがくる、空が曇って稲妻が光る
0022 夕立がくる 空が曇って稲妻がひかり波が荒れて、浮いている舟は落ち着つかない |
塩津山といふ道のいとしげきを、賤の男のあやしきさまどもして、「なほからき道なりや」と言ふを聞きて、
0023 知りぬらむ行き来にならす塩津山 世にふる道はからきものぞと |
塩津山の道が草木が茂って、下男がみすぼらしい姿で、「やはりここは難儀な道だなあ」というのを聞いて、
0023 分ったでしょういつも行き来する塩津山の道でも 昔から世渡りの道はつらいものだと |
湖に、おいつ島といふ洲崎に向かひて、わらはべの浦といふ入り海のをかしきを、口ずさびに、
0024 おいつ島島守る神がやいさむらむ 波も騒がぬわらはべの浦 |
琵琶湖でおいつ島という洲崎に向かって、わらわべの浦という入江がおもしろいので、口すさみに、
0024 おいつ島の島守る神がいさめたのだろうか波が静かなわらわべの浦 |
暦に「初雪降る」と書きたる日、目に近き日野岳といふ山の雪、いと深う見やらるれば、
0025 ここにかく日野の杉むら埋む雪 小塩の松に今日やまがへる |
暦に「初雪降る」と書いた日、近くの日野岳という山の雪が深いように見えたので、
0025 こちらでは日野山の杉林が埋まるほどの雪ですが都でも小塩の松に雪が降っているでしょうか |
返歌、
0026 小塩山松の上葉に今日やさは 峯の薄雪花と見ゆらむ |
返歌、
0026 小塩山の松の上葉に今日降る峰の薄雪は花と見えるでしょう |
降り積みて、いとむつかしき雪をかき捨てて、山のやうにしなしたるに、人びと登りて、「なほ、これ出でて見たまへ」と言へば、
0027 ふるさとに帰る山路のそれならば 心やゆくと雪も見てまし |
雪が降り積もって、たいそうやっかいな雪をかき捨てて、山のようにした所に、人びとが登って、「雪は嫌でも、ここへ出て来て御覧なさい」と言うので、
0027 そこが都故郷へ帰るの山の雪でしたら、出て行って見もしましょう |
年かへりて、「唐人見に行かむ」と言ひける人の、「春はとく来るものと、いかで知らせたてまつらむ」と言ひたるに、
0028 春なれど白根の深雪いや積もり 解くべきほどのいつとなきかな |
新年になって、「唐人を見に行こう」と言っていた人が、「春は早く来るものと、何とかしてお知らせ申そう」と言ったので、
0028 春とはなりましたが、白山の深雪はますます降り積もって いつ雪解けとなるかは分かりませんわ |
近江守の女、懸想すと聞く人の「二心なし」など、常に言ひわたりければ、うるさくて、
0029 湖の友呼ぶ千鳥ことならば 八十の湊に声絶えなせそ |
近江守の娘に、求婚しているという評判の人が、「あなた以外に、二心ありません」などと、いつも言い続けていたので、わずらわしくなって、
0029 湖の友を呼ぶ千鳥よ、同じことならば たくさんの湊に声をかけなさい |
歌絵に海人の塩焼くかたを描きて、樵り積みたる投げ木のもとに書きて、返しやる。
0030 四方の海に塩焼く海人の心から 焼くとはかかる投げ木をや積む |
歌絵に海人が塩を焼いている絵を描いて、木を切って積み上げた薪の処に、返歌を投げかえす。
0030 あちこちの海で塩を焼く海人のように自分から 焦がれているとはこのような嘆きを重ねているのでしょうか |
文の上に朱といふ物をつぶつぶと注きかけて、「涙の色」など書きたる人の返り事に、
0031 紅の涙ぞいとど疎まるる 移る心の色に見ゆれば もとより人の女を得たる人なりけり。 |
文の上に朱色のものを注いで、「涙の色を見てください」などと書いた人の返事で、
0031 紅の涙と聞くと疎まれる 移ろいやすい心が色に表れています もとより、確かな親の娘を妻に得ている人なのだ |
「文散らしけり」と聞きて、「ありし文ども、とり集めておこせずは、返り事書かじ」と、言葉にてのみ言ひやりければ、「みなおこす」とて、いみじく怨じたりければ、睦月十日ばかりのことなりけり。
0032 閉ぢたりし上の薄氷解けながらさは絶えねとや山の下水 |
わたしの手紙を他の人に見せたと聞いて、「今まで書いた文を全部返してくれなければ、返事は書きません」と文使いに口頭で伝えさせた。正月十日頃のことである。
0032 春がきて薄氷が溶けるように打ち解けましたのに、これでは、山の下水も絶えて絶交するとお考えなのですか |
すかされて、いと暗うなりたるに、おこせたる、
0033 春の東風で解けるくらいの氷ならば石間の水は絶えるなら絶えればいいのだ |
わたしに言いすかされて、落ち込んでいた頃、詠った歌
0033 東風に解けるほどの浅い仲なら底の見える石間の水は絶えるなら絶えてしまえばよいのだ |
「今はものも聞こえじ」と、腹立ちたれば、笑ひて、返し、
0034 言ひ絶えばさこそは絶えめなにかそのみはらの池を包みしもせむ |
「もう何も言いません」と腹が立って笑って、返歌する、
0034 もう文も出さないと仰るならそれもいいでしょう。どうしてあなたの腹立ちにこちらが遠慮することがありましょう |
夜中ばかりに、又、
0035 たけからぬ人数なみはわきかへりみはらの池に立てどかひなし |
夜中に又、文がきて
0035 優れているわけでもなく、人並みの身分でもないが、腹が立ってみはらの池に立ったが、お前には負けたよ |
桜を瓶に挿して見るに、とりもあへず散りければ、桃の花を見やりて、
0036 折りて見ば近まさりせよ桃の花 思ひ隈なき桜惜しまじ |
桜を瓶に差して眺めていると、すぐに散ってしまったので、桃の花を思って、
0036 近くで見るほど美しい桃の花です自分勝手な桜は惜しくない |
返し、人、
0037 桃といふ名もあるものを時の間に散る桜にも思ひ落とさじ |
返歌、ある人から、
0037 もも(百)という名もあるのですから、すぐに散る桜に思いいたすことはしません |
花の散るころ、梨の花といふも、桜も夕暮れの風の騒ぎに、いづれと見えぬ色なるを、
0038 花といはばいづれか匂ひなしと見む散り交ふ色の異ならなくに |
花の散るころ、梨の花も、桜も夕暮れの風が荒い中、どちらの色か見分けがつかないので、
0038 花というからには梨と桜とどちらが美しくないなどといえようか風に散る色は同じなので |
遠き所へ行きにし人の亡くなりにけるを、親はらからなど帰り来て、悲しきこと言ひたるに、
0039 いづかたの雲路と聞かば訪ねまし列離れけむ雁がゆくへを |
遠い所に行っていた人が亡くなって、親兄弟が帰ってきて、悲しいことを言うので、
0039 どちらの雲路を行ったと分れば尋ねましょう 列を離れた雁の行方を |
去年より薄鈍なる人に、女院崩れさせたまへる春、いたう霞みたる夕暮れに、人のさし置かせたる。
0040 雲の上ももの思ふ春は墨染めに霞む空さへあはれなるかな |
去年から夫の喪に服しているわたしに、帝の母君がお亡くなりになった春、霞にくもる夕暮れに、人が文を置いていった。
0040 帝が喪に服している春は 霞にくもる夕暮れの空さえあわれだ |
返し、
0041 なにかこのほどなき袖を濡らすらむ霞の衣なべて着る世に |
返歌、
0041 何ほどでもないわたしごときが夫の喪で袖を濡らして嘆いていることか、天下の皆が喪に服しているのに |
亡くなりし人の女の、親の手書きつけたりけるものを見て、言ひたりし。
0042 夕霧にみ島隠れし鴛鴦の子の跡を見る見る惑はるるかな |
亡夫の他の女の娘が親の筆跡を見て、詠って寄こしたもの。
0042 夕霧に島がくれした鴛鴦の子が途方に暮れるように親の筆跡を見て途方にくれています |
同じ人、「荒れたる宿の桜のおもしろきこと」とて、折りておこせたるに、
0043 散る花を嘆きし人は木のもとの寂しきことやかねて知りけむ 「思ひ絶えせぬ」と、亡き人の言ひけることを思ひ出でたるなり。 |
同じ人からまた、「荒れた庭の桜が趣があったので」とて、折った枝につけて送ってきた、
0043 桜が散るのを嘆いていた亡父は亡くなったあと取り残された子の寂しさを知っていたのだろうか 「桜が恋しい」と亡き人が言っていたのを思い出した。 |
絵に、もののけ憑きたる女の醜きかた描きたる後ろに、鬼になりたるもとの妻を、小法師の縛りたるかた描きて、男は経読みて、もののけ責めたるところを見て、
0044 亡き人にかごとはかけてわづらふもおのが心の鬼にやはあらぬ |
物の怪が憑いた女の醜い姿の後ろに、鬼になった先妻を、小法師が縛っている様を描いて、男が経を読んで、物の怪を責めている絵を見て、
0044 亡き人のせいにしてわずらいを何とかしようとするのも己の心の鬼が原因ではないか |
返し、
0045 ことわりや君が心の闇なれば鬼の影とはしるく見ゆらむ |
返歌、
0045 ごもっとです、君の心が闇なので、鬼の影とはっきり分かるのでしょう |
絵に、梅の花見るとて、女、妻戸押し開けて、二三人ゐたるに、みな人びと寝たるけしき描いたるに、いとさだ過ぎたるおもとの、つらづゑついて眺めたるかたあるところ、
0046 春の夜の闇の惑ひに色ならぬ心に花の香をぞ染めつる |
絵の中で、梅の花を見ようとし、女が、妻戸を開けて入り、二三人は座していたが、他はみな寝ている様子を描いていて、盛りを過ぎた女房が、頬杖して物思いに耽っている図で、
0046 春の夜の闇のなかで、色気のない心に花の香が染みる |
同じ絵に、嵯峨野に花見る女車あり。なれたる童の、萩の花に立ち寄りて折りたるところ、
0047 さ雄鹿のしか慣らはせる萩なれや立ちよるからにおのれ折れ伏す |
同じ絵に、嵯峨野で花を見る女車あり。馴れた童が、萩の花に近寄って手折ったところ、
0047 雄鹿がいつもそのように慣らしている萩なのでしょうか童女が近付くと同時に自然と萩が折れ伏すことよ |
世のはかなきことを嘆くころ、陸奥に名ある所どころ描いたるを見て、塩釜、
0048 見し人の煙となりし夕べより名ぞ睦ましき塩釜の浦 |
連れ添った人が亡くなって世の無常を嘆いている頃、陸奥に名のある所を描いた絵を見て、塩釜、
0048 親しくしていた人が煙となった夕べから、名に親しみが感じられる塩釜の浦だこと。 |
門叩きわづらひて帰りにける人の、つとめて、
0049 世とともに荒き風吹く西の海も磯辺に波は寄せずとや見し |
門を叩きあぐねて帰っていった人の、暁に、
0049 いつも荒い風が吹きつける西の海では、磯辺まで波は寄せてこないとお思いでしょうか。 |
と恨みたりける返り事、
0050 かへりては思ひ知りぬや岩角に浮きて寄りける岸のあだ波 |
と、恨みの歌に対する返歌、
0050 お帰りになって分ったでしょう岩角に打ち寄せる浮気なあだ波を |
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公開日2024年//月//日