Macbeth

Act 1

第一幕

SCENE 6 Before Macbeth's castle.

Hautboys and torches. Enter DUNCAN, MALCOLM, DONALBAIN, BANQUO, LENNOX, MACDUFF, ROSS, ANGUS, and Attendants

第六場 マクベスの居城の前

オーボエの音、松明(たいまつ)。ダンカン、マルコム、ドナルベイン、バンクォウ、レノックス、マクダフ、ロス、アンガスそして従者たち入場。

DUNCAN

This castle hath a pleasant seat; the air
Nimbly and sweetly recommends itself
Unto our gentle senses.

ダンカン

この城は素晴らしい処にあるなあ。
風が実にさわやかで、
心地よい。

BANQUO

This guest of summer,
The temple-haunting martlet, does approve,
By his loved mansionry, that the heaven's breath5
Smells wooingly here: no jutty, frieze,
Buttress, nor coign of vantage, but this bird
Hath made his pendent bed and procreant cradle:
Where they most breed and haunt, I have observed,
The air is delicate.
Enter LADY MACBETH

バンクォウ

この夏の来客たち、
寺に棲みつく岩ツバメが
たくさん巣作りをしているところをみると、
天の吐息がここで和(なご)んでいるのでしょう。出窓も浮き彫り彫刻も
控え壁も角のベランダもないのに、この小鳥たちは
吊り床(どこ)やひなのゆりかごを作っている、
この鳥が集(つど)って子育てをする処は、
空気はさわやかなのです。
マクベス夫人入場

DUNCAN

See, see, our honour'd hostess!10
The love that follows us sometime is our trouble,
Which still we thank as love. Herein I teach you
How you shall bid God 'ild us for your pains,
And thank us for your trouble.

ダンカン

やあやあ、御夫人がお出ましだ。
余に付きまとう臣民の敬愛は、時にわずらわしいと思うときがあるが、
敬愛のしるしなので、余はそのわずらわしさに感謝している。これによって教えよう、
あなたのご苦労が、余に報いていることになるのですよ、
余があなたのお手間を取らせていることが、余に感謝していることになるのです。

LADY MACBETH

All our service
In every point twice done and then done double15
Were poor and single business to contend
Against those honours deep and broad wherewith
Your majesty loads our house: for those of old,
And the late dignities heap'd up to them,
We rest your hermits.

マクベス夫人

われらのすべての奉仕は
それを二倍してさらに二倍にしても、
陛下がわたしたちの館に下される
広大無辺の栄誉には
とても及びません。これまで下された御恩や
またこのたび下された御恩に対して
陛下のご健勝をお祈りするばかりです。

DUNCAN

Where's the thane of Cawdor?20
We coursed him at the heels, and had a purpose
To be his purveyor: but he rides well;
And his great love, sharp as his spur, hath holp him
To his home before us. Fair and noble hostess,
We are your guest to-night.

ダンカン

コーダの領主はどちらにいますか。
領主の後を追いかけ、先回りして
徴発吏たらんとしましたが、領主は騎馬の名手、
さらに領主の家族愛は拍車に駆られて
余よりも先にご帰還となった次第。美しく高貴な夫人(かた)よ、
今夜はお世話になりますよ。

LADY MACBETH

Your servants ever25
Have theirs, themselves and what is theirs, in compt,
To make their audit at your highness' pleasure,
Still to return your own.

マクベス夫人

陛下の臣民は、
家族も、自分たちも、そして全員の資産も、すべて数を明らかにし、
決算書ができる用意しておりますので、御意のままに
いつでも陛下のものを陛下にお返しできます。

DUNCAN

Give me your hand;
Conduct me to mine host: we love him highly,
And shall continue our graces towards him.30
By your leave, hostess.

ダンカン

お手をお借りしたい、
どうぞ御主人の元へ案内してください、余はご主人を深く敬愛し
これからも贔屓(ひいき)にしますよ、
ご夫人のお許しを得て。

Exeunt

退場


1.6.1-5

seat =situation.
temple-haunting martlet (通常は)礼拝堂など教会の建物に棲んでいる岩ツバメ。
mansionry=mansions collectively. 単数形を使っているが、ツバメの巣はたくさんあることになる。

1.6.6-10

no jutty, frieze, Buttress, nor coign of vantage 建築用語で大変分かりずらい。いずれも建物の突出部をなしていて岩イワツバメが巣作りをしやすい建物部分である。マクベスの城はそのような突出部のない建物であるが、岩ツバメがたくさんいることは環境がいい証拠といっている。 "jutty"= projecting part of a wall or building. 「出窓」と訳す。"frieze" = carved or painted decorative band beneath a building's cornice.「浮き彫り彫刻」と訳す。 "Buttress"= external support for a wall or building.「控え壁」と訳す。「扶壁(ふかべ)」ともいう。 "coign of vantage"= projecting corner ("coign") of a building affording faculty for obsevation or action.「角のベランダ」と訳す。

1.6.11-15

The love that follows us sometime is our trouble, Which still we thank as love. Herein I teach you How you shall bid God 'ild us for your pains, And thank us for your trouble  royal we が使われています。「お世話になります」を回りくどく言っている。Herein...trouble までは次の説明がある。Duncan turns a self-deprecating compliment: Lady Macbeth should learn from the king's example to ask God to reward Duncan for the effort she makes and to thank Duncan for providing onerous occasion. ダンカンはへりくだった挨拶をしている。マクベス夫人は王の事例から学び、自分の労力がダンカンを報いることになるように神に頼むべきである、 そしてわずらわしい機会をダンカンが提供したことに対して、ダンカンに感謝すべきである。
'ild = yield (reward).報いる。

1.6.16-20

single = 「弱い」double との縁語。
of old =「以前の」。
of late = recent.
We rest your hermit. 「わたしたちは陛下の祈り部です」。"rest"= remain. "hermits" = beadsmen, persons bound by vow or fee to pray for an individual's spiritual welfare.個人の精神的幸福のために、誓いまたは手数料を得て祈る人。

1.6.21-25

coursed = pursued.
purveyor /ˈpə:veiə/ 徴発吏。王に先回りして、食料・運搬手段・宿等の必要な物品・サービスを調達する役人。
holp =helped.

1.6.26-30

Have theirs, themselves and what is theirs, in compt  "have... in compt"「決算している」別の版では、in countとある。"in compt"/kaunt/= 「数える」、現代風では「たな卸し」の意味と思います。 "theirs"= their family. themselves, what is theirsは自分自身のもの、親族一同のものの意味か。追記注、ここでは、家族たち、自分たち、それら全部の所有物、が正確な意味のようです。すなわち、王の所有物は、人(家族、自分たち)とその所有物に及びます。
audit 決算書、資産をすべて記載した書類。"to make their audit" (これから)決算書はいつでも作れます。
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