第六章 哲学者たち
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世の最高の裁判官の精神も、彼のまわりで起こるやかましい音でたちまちかき乱されないほど、
超然としたものではない。彼の考えを妨げるためには、大砲の音などいらない。風見や滑車の音だけでいい。
彼が現在うまく推理できないからといって驚いてはいけない。一匹の蝿(はえ)が、彼の耳もとでぶんぶん
いっているのだ。彼によい決断ができるようにするためには、それだけで十分なのだ。もし彼が真理を
見いだせるようになることをお望みなら、この動物を追い払えたまえ。それが、彼の理性を働かせなくし、
幾多の都市や王国を治めているこのたくましい知性をかき乱しているのだ。
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