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世の中は 大伴旅人は、大宰府の時の歌を沢山残しているが、その中に妻が大宰府で亡くなった歌もある。その他色々な不幸が重なったのだろう。自身も病を患っている。今が楽しければ、来世は虫にも鳥にもならんと詠んだ人だが、このような感慨もあったのだろう。率直な心情が出ている。 |
793
太宰帥―大宰府の長官。ここでは大伴旅人。 凶問―凶事の知らせ。その内容は不明。 禍故重畳―不幸な出来事が重なる。 両君―二人。誰をさすか不明。 |
802
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802 山上憶良の歌。憶良は当時筑紫国守(つくしのみちのくちのかみ)で、大宰府の長官であった大伴旅人と親交があった。筑紫の国は、筑前・筑後をさし、合わせて現在の福岡県の大部分にあたる。元来は九州全体の古称。 ラゴラ―釈迦の実子。釈迦はこの子が生まれてからすぐ出家した。成道後帰郷した時、ラゴラを出家させた。釈迦十大弟子のひとりとなる。 まなかひ―現前。カヒは交差する意の四段動詞カフの名詞形 もとなかかりて―モトナは、いたずらに、むやみに。 |
反歌
803
憶良は大いなる常識人であった。別の長歌・反歌(800番)で、妻子を顧みず、出家して空しく修行の道の甲斐なくなるよりも、家に帰って家業に精を出しなさいと、誡める歌も残している。その歌の題詞に「自ら倍俗先生(世俗に背を向けた隠遁者)と称く。意気は青雲の上に揚がれども、身体は塵俗の中に在り。未だ得道に修行するの聖に験あらず、・・・」と書き、その反歌で「ひさかたの 天路(あまじ)は遠し なほなほに 家に帰りて 業(なり)をしまさな」と詠っている。
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803 ・・・ |