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Act 2 |
第二幕 |
SCENE 2. Rome. The house of LEPIDUS. Enter DOMITIUS ENOBARBUS and LEPIDUS |
第二場 ローマ。レピダスの館。 ドミシャス・イナバーバスとレピダス入場 |
LEPIDUS
Good Enobarbus, 'tis a worthy deed,
And shall become you well, to entreat your captain To soft and gentle speech. |
レピダス
イナバーバスよ、どうかおまえの大将に
穏やかに話をしてくれるように頼んでくれるなら、 それは君らしい立派な行いと思うがな。 |
DOMITIUS ENOBARBUS
I shall entreat him
To answer like himself: if Caesar move him, Let Antony look over Caesar's head5 And speak as loud as Mars. By Jupiter, Were I the wearer of Antonius' beard, I would not shave't to-day. |
ドミシャス・イナバーバス
王者らしく応答してくれるように
頼んでみるさ。もしシーザーが気に触ることをしたら、 ジーザーを見下して 軍神マースのような大声でしゃべるように進言するよ。 おれがアントニーのように髭を生やしていたら、 今日の日のために剃ることは絶対しないぞ。 |
LEPIDUS
'Tis not a time
For private stomaching. |
レピダス
個人的な恨みをどうこうする
時じゃないぞ。 |
DOMITIUS ENOBARBUS
Every time
Serves for the matter that is then born in't.10 |
ドミシャス・イナバーバス
どんな時だって
その時々に必要な事があるさ。 |
LEPIDUS
But small to greater matters must give way.
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レピダス
小事は引っ込めて、大事を優先しなければ。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Not if the small come first.
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ドミシャス・イナバーバス
小事が先に来れば話は別だ。
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LEPIDUS
Your speech is passion:
But, pray you, stir no embers up. Here comes The noble Antony. Enter MARK ANTONY and VENTIDIUS
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レピダス
ずけずけ言うなあ。
どうか、燃えさしを掻き立てるようなことはしないでくれ。 アントニーが来るぞ。 マーク・アントニーとヴェンテディアス入場
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DOMITIUS ENOBARBUS
And yonder, Caesar.
Enter OCTAVIUS CAESAR, MECAENAS, and AGRIPPA
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イナバーバス
あっちからはシーザーだ。
オクタヴィアス・シーザーとミシーナスそしてアグリッパ入場
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MARK ANTONY
If we compose well here, to Parthia:15
Hark, Ventidius. |
マーク・アントニー
ここでうまく話がついたら、パーシアだ。
聞いているか、ヴェンテディアスィアス。 |
OCTAVIUS CAESAR
I do not know,
Mecaenas; ask Agrippa.
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オクタヴィアス・シーザー
おれは知らない、ミシーナス、
アグリッパに聞いてくれ。
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LEPIDUS
Noble friends,
That which combined us was most great, and let not A leaner action rend us. What's amiss, May it be gently heard: when we debate20 Our trivial difference loud, we do commit Murder in healing wounds: then, noble partners, The rather, for I earnestly beseech, Touch you the sourest points with sweetest terms, Nor curstness grow to the matter. |
レピダス
ようこそ、友よ。
われらを結び付けているのは重大事だ、 瑣末な事で仲間割れしたくない。意見の相違は 穏やかに聞こう。些細な違いを 声高に言い合えば、傷を治そうとして 殺人を犯す愚に等しい。だから友よ、 どうかわたしが熱心に頼むのだから、それに免じて、 酸っぱい点は甘い言葉でつつみ 悪意をむき出しにしないようにしよう。 |
MARK ANTONY |
マーク・アントニー
よく言ってくれた。
たとえわしが今軍隊を前にして、戦おうとしているとしても こうするだろう。 トランペットの吹奏
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OCTAVIUS CAESAR
Welcome to Rome.
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オクタヴィアス・シーザー
ようこそローマへ来られた。
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MARK ANTONY
Thank you.
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マーク・アントニー
どうも。
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OCTAVIUS CAESAR
Sit.
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オクタヴィアス・シーザー
お座り下さい。
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MARK ANTONY
Sit, sir.
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マーク・アントニー
いえ、そちらこそ。
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OCTAVIUS CAESAR
Nay, then.
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オクタヴィアス・シーザー
それでは。
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MARK ANTONY
I learn, you take things ill which are not so,
Or being, concern you not. |
マーク・アントニー
あなたは誤解されているようですね、
事実そうであっても、あなたには関係のないことでしょう。 |
OCTAVIUS CAESAR
I must be laugh'd at,30
If, or for nothing or a little, I Should say myself offended, and with you Chiefly i' the world; more laugh'd at, that I should Once name you derogately, when to sound your name It not concern'd me. |
オクタヴィアス・シーザー
もし何もないのにあるいはごく些細なことで
わたしが腹を立てた、それも他ならぬあなたに対して 立腹したということになると、わたしが笑いのもになるでしょう。 まして、わたしに係わりのないことで あなたを悪し様に言うとなれば、 もっと笑いものになるでしょう。 |
MARK ANTONY
My being in Egypt, Caesar,35
What was't to you? |
マーク・アントニー
シーザー、わたしがエジプトにいたことが、
あなたにどういう関係があるか。 |
OCTAVIUS CAESAR
No more than my residing here at Rome
Might be to you in Egypt: yet, if you there Did practise on my state, your being in Egypt Might be my question. |
オクタヴィアス・シーザー
ないだろうな、わたしがローマにいるのが
エジプトにいるあなたに関係ないようにな。しかし、 そこであなたがわたしの権威に仕掛けたとなると、 あなたがエジプトにいてもわたしの問題となる。. |
MARK ANTONY
How intend you, practised?40
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マーク・アントニー
「仕掛けた」とは、何の意味か。
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OCTAVIUS CAESAR
You may be pleased to catch at mine intent
By what did here befal me. Your wife and brother Made wars upon me; and their contestation Was theme for you, you were the word of war. |
オクタヴィアス・シーザー
ここでわたしにふりかかったことから
どうかわたしの意図をご推察下さい。あなたの妻と弟が わたしに戦争を仕掛けました、その挑戦は あなたのためだったのです、あなたこそ戦争の大義名分でした。. |
MARK ANTONY
You do mistake your business; my brother never45
Did urge me in his act: I did inquire it; And have my learning from some true reports, That drew their swords with you. Did he not rather Discredit my authority with yours; And make the wars alike against my stomach,50 Having alike your cause? Of this my letters Before did satisfy you. If you'll patch a quarrel, As matter whole you have not to make it with, It must not be with this. |
マーク・アントニー
あなたは間違っています、
弟は挙兵にさいして、決してわたしの名を出しませんでした。 わたしは問いただして、実情を知る者から情報を得ています、 それはあなたの軍と戦った者からです。 弟はあなたと同様わたしにも反旗を翻したことになりませんか、 わたしの意に反して、二人に戦争を仕掛けたのですから、 あなたと同じ志をわたしも持っているのですから。このことについては 以前、納得のいく説明を手紙に書きました。もしあなたが、 つぎはぎあわせて争いの帳尻を合わせるにしても、 これを理由にしないで頂きたい。 |
OCTAVIUS CAESAR |
オクタヴィアス・シーザー
自慢しているのですか、
判断の間違いはわたしの責任にして。 自分の失態は棚に上げて。 |
MARK ANTONY
Not so, not so;
I know you could not lack, I am certain on't, Very necessity of this thought, that I, Your partner in the cause 'gainst which he fought, Could not with graceful eyes attend those wars60 Which fronted mine own peace. As for my wife, I would you had her spirit in such another: The third o' the world is yours; which with a snaffle You may pace easy, but not such a wife. |
マーク・アントニー
いえいえ、そうじゃない。
あなたがこう考えてくれるだろうことは 察しております、すなわち、わたしは同じ大義に立つ あなたの仲間だ、弟はそれにたてついたのだし、 わたしの平安を乱すような そんな戦争にわたしが賛成することはできないでしょう。 妻に関していえば、今世界の三分の一はあなたのものだ、 あなたなら国を治めるのは馬を御すように容易でしょうが、 あの気の強い女を御すのは、容易なことではない。 |
DOMITIUS ENOBARBUS
Would we had all such wives, that the 65men might go
to wars with the women!
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ドミシャス・イナバーバス
そんな妻をもったら、夫婦で出陣ということになりますな。
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MARK ANTONY
So much uncurbable, her garboils, Caesar
Made out of her impatience, which not wanted Shrewdness of policy too, I grieving grant Did you too much disquiet: for that you must70 But say, I could not help it. |
マーク・アントニー
それほど御しがたい女だよ、シーザー、あの暴挙は
彼女の癇癪が引き起こしたものであって、 そこには抜かりなく計算も働いているが、 あなたに大変ご迷惑をかけた。お察し下さい、 わたしにはどうしようもできなかったのです。 |
OCTAVIUS CAESAR
I wrote to you
When rioting in Alexandria; you Did pocket up my letters, and with taunts Did gibe my missive out of audience |
オクタヴィアス・シーザー
あなたに書いたはずだ、
アレキサンドリア好き放題にやっていた時 わたしの手紙には見向きもせず、謁見もせず、 使者を侮辱したでしょう。 |
MARK ANTONY |
マーク・アントニー
シーザー、
あれは、許可も得ずに突然現れたのだ。 三人の王を接待して、朝方のように 正気ではなかったのだ、しかし翌日 使者に事情を話したぞ、 詫びたも同然の内容でな。 このことを争いの種にするのはよそう、口論するにも あの使者の件ははずそう。 |
OCTAVIUS CAESAR
You have broken
The article of your oath; which you shall never Have tongue to charge me with. |
オクタヴィアス・シーザー
おまえは
おれとの盟約の条項を破ったのだ、 そのことで おれを責めることは決してできないはずだ。 |
LEPIDUS
Soft, Caesar!
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レピダス
まて、シーザー。
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MARK ANTONY
No,
Lepidus, let him speak: The honour is sacred which he talks on now,85 Supposing that I lack'd it. But, on, Caesar; The article of my oath. |
マーク・アントニー
いや、
レピダス、言わせてやれ。 今喋ったことは神聖なる名誉にかかわることだ、 おれがそれに欠けているとは、言ってみろ、シーザー、 同盟の条約だと。 |
OCTAVIUS CAESAR
To lend me arms and aid when I required them;
The which you both denied. |
オクタヴィアス・シーザー
わたしが要請したら武器と支援部隊を送るというものだ、
あなたは断れない。 |
MARK ANTONY
Neglected, rather;
And then when poison'd hours had bound me up90 From mine own knowledge. As nearly as I may, I'll play the penitent to you: but mine honesty Shall not make poor my greatness, nor my power Work without it. Truth is, that Fulvia, To have me out of Egypt, made wars here;95 For which myself, the ignorant motive, do So far ask pardon as befits mine honour To stoop in such a case. |
マーク・アントニー
むしろ怠ったというべきでしょう、
その頃は耽溺な時簡に浸っていて、 正気を失わせていたのだ。正直に言おう、 わたしは悔悟者だ、あなたに告白しよう。だが、正直に言ったからといって わたしの栄誉を下げるものではないし、わたしが権勢を 振えないというものでもない。本当のところ、ファルヴィアは わたしをエジプトから連れ戻そうとして、ここで戦争を起こしたのだ、 そのことについて、当時は事情を知らなかったが、 この場合には腰をかがめて わたしのなしうる限りの許しを請いたい。 |
LEPIDUS
'Tis noble spoken.
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レピダス
よくぞ言ってくれた。
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MECAENAS
If it might please you, to enforce no further
The griefs between ye: to forget them quite100 Were to remember that the present need Speaks to atone you. |
ミシーナス
もしお許しをいただければ、お二人の不信感を
これ以上ひろげないために、今までのことは忘れて、 現在緊急に行動すべきことを 思い起こしましょう。 |
LEPIDUS
Worthily spoken, Mecaenas.
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レピダス
よく言ってくれた、ミシーナス。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Or, if you borrow one another's love for the
instant, you may, when you hear no more words of
Pompey, return it again: you shall 105have time to
wrangle in when you have nothing else to do.
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ドミシャス・イナバーバス
でなければ、当面は仲直りして、ポンペイの噂が聞こえなくなったら、元にもどって、他にやることがなくなればまた喧嘩を始めるがいいのではないでしょうか。
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MARK ANTONY
Thou art a soldier only: speak no more.
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マーク・アントニー
戦い以外のことに口を出すな。
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DOMITIUS ENOBARBUS
That truth should be silent I had almost forgot.110
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ドミシャス・イナバーバス
本当のことは喋っちゃいかんことを忘れていました。
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MARK ANTONY
You wrong this presence; therefore speak no more.
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マーク・アントニー
お歴々に失礼だろう、だから喋るなと言っておる。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Go to, then; your considerate stone.
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ドミシャス・イナバーバス
分かりました、石になります。
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OCTAVIUS CAESAR
I do not much dislike the matter, but
The manner of his speech; for't cannot be We shall remain in friendship, our conditions115 So differing in their acts. Yet if I knew What hoop should hold us stanch, from edge to edge O' the world I would pursue it. |
オクタヴィアス・シーザー
言ってることは悪くないが、
問題は言い方だろう、 われわれは友情に結ばれることはありえないのだ、 それほど互いの性格が違うからな。 きっちりと二人を結びつける輪があれば どこまでも探しに行きたいが。 |
AGRIPPA
Give me leave, Caesar,--
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アグリッパ
恐れながら、シーザー。
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OCTAVIUS CAESAR
Speak, Agrippa.
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オクタヴィアス・シーザー
言ってみろ、アグリッパ。
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AGRIPPA |
アグリッパ
将軍には母方の姉がいます、
美しいオクタヴィアです。そしてマークアントニーは 今独身です。 |
OCTAVIUS CAESAR
Say not so, Agrippa:
If Cleopatra heard you, your reproof Were well deserved of rashness. |
オクタヴィアス・シーザー
止めろ、アグリッパ。
もしクレオパトラが聞いたら、 おまえは軽率のそしりをまぬかれぬぞ。 |
MARK ANTONY
I am not married, Caesar: let me hear125
Agrippa further speak. |
マーク・アントニー
わたしは確かに結婚してはいない、シーザー。
アグリッパもっと聞かせてくれ。 |
AGRIPPA
To hold you in perpetual amity,
To make you brothers, and to knit your hearts With an unslipping knot, take Antony Octavia to his wife; whose beauty claims130 No worse a husband than the best of men; Whose virtue and whose general graces speak That which none else can utter. By this marriage, All little jealousies, which now seem great, And all great fears, which now import their dangers,135 Would then be nothing: truths would be tales, Where now half tales be truths: her love to both Would, each to other and all loves to both, Draw after her. Pardon what I have spoke; For 'tis a studied, not a present thought,140 By duty ruminated. |
アグリッパ
お二人が永遠の友好関係を保ち、
兄弟の契りを交わし、解けない絆で 心をしっかり結びつけるために、 アントニーがオクタビアを妻に迎えるのはどうでしょうか、 オクタヴィアの美しさは最高の男を夫にするにふさわしく、 その美徳とたしなみは 他のだれも及ばないものを備えております。この結婚により いま大きく見えるすべての不信感 今危険をはらんでいる一切の疑惑は 解消されるでしょう。今はあらぬうわさが事実とされていますが 事実がうわさとなりましょう。オクタヴィアのお二人への愛が お二人の友情に変わり、それが伝播して 市民たちの愛がお二人に注がれるようになりましょう。 僭越な発言をお許し下さい、この場の思いつきではなく、 忠誠心から熟慮した結果なのです。 |
MARK ANTONY
Will Caesar speak?
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マーク・アントニー
シーザーのご意見は。
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OCTAVIUS CAESAR
Not till he hears how Antony is touch'd
With what is spoke already. |
オクタヴィアス・シーザー
おれの考えは、今の話をアントニーがどう思ってるいるか
聞いてからにしよう。 |
MARK ANTONY
What power is in Agrippa,
If I would say, 'Agrippa, be it so,' To make this good? |
マーク・アントニー
もしわたしが、アグリッパ、そのようにせよ、といったら
アグリッパには 実現させる権限があるのか。 |
OCTAVIUS CAESAR
The power of Caesar, and145
His power unto Octavia. |
オクタヴィアス・シーザー
シーザーの全権をゆだねます、
オクタヴィアスに対する権限も。 |
MARK ANTONY
May I never
To this good purpose, that so fairly shows, Dream of impediment! Let me have thy hand: Further this act of grace: and from this hour The heart of brothers govern in our loves150 And sway our great designs! |
マーク・アントニー
おお、どうか
前途の明るいこの素晴らしい提案が、 支障なく実現されすように。お手を拝借したい、 この慶事を進めて下さい。これ以後 われわれは兄弟愛で結ばれ、 そして兄弟で事をなすことになる。 |
OCTAVIUS CAESAR
There is my hand.
A sister I bequeath you, whom no brother Did ever love so dearly: let her live To join our kingdoms and our hearts; and never Fly off our loves again! |
オクタヴィアス・シーザー
さあ、どうぞ。
あなたに差し上げる姉は 弟からかってないほど愛されている。 姉はわれわれの王国と友情の絆だ。決して 今後仲違いのないようにしよう。 |
LEPIDUS
Happily, amen!155
|
レピダス
よかった、じつにめでたい。
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MARK ANTONY
I did not think to draw my sword 'gainst Pompey;
For he hath laid strange courtesies and great Of late upon me: I must thank him only, Lest my remembrance suffer ill report; At heel of that, defy him. |
マーク・アントニー
ポンペイと戦うことになるなんて思わなかった。
彼は最近わたしに 非常な親切をしてくれたのだ。感謝しなければ、 忘恩のそしりをまぬかれない。 礼をしてから、挑戦することにしよう。 |
LEPIDUS |
レピダス
時間がないぞ。
ポンペイを直ぐにも探し出さなければ、 奴がわれわれを探し出すだろう。 |
MARK ANTONY
Where lies he?
|
マーク・アントニー
あいつはどこに陣を張っているのか。
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OCTAVIUS CAESAR
About the mount Misenum.
|
オクタヴィアス・シーザー
マイシーナム山の辺りだ。
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MARK ANTONY
What is his strength by land?
|
マーク・アントニー
陸上の兵力は。
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OCTAVIUS CAESAR
Great and increasing: but by sea165
He is an absolute master. |
オクタヴィアス・シーザー
相当な兵力でさらに増大しつつある、それに海は
完全に支配している。 |
MARK ANTONY
So is the fame.
Would we had spoke together! Haste we for it: Yet, ere we put ourselves in arms, dispatch we The business we have talk'd of. |
マーク・アントニー
うわさ通りだ。
われわれがもっと早く話し合っていればな。戦い準備を急ごう。 だが武装する前に 今決めたことをきちんと処置しよう。 |
OCTAVIUS CAESAR |
オクタヴィアス・シーザー
おお、そうしよう。
姉に会いに行きましょう、 わたしがご案内します。 |
MARK ANTONY
Let us, Lepidus,
Not lack your company. |
マーク・アントニー
レピダス、あなたも
同席してくれるでしょうね。 |
LEPIDUS
Noble Antony,
Not sickness should detain me. Flourish. Exeunt OCTAVIUS CAESAR, MARK ANTONY, and LEPIDUS
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レピダス
アントニー、
たとえ病を冒しても行きますとも。 トランペットの吹奏。オクタヴィアス・シーザー、マーク・アントニー、そしてレピダス退場。
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MECAENAS
Welcome from Egypt, sir.
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ミシーナス
エジプトからようこそお帰りなされた。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Half the heart of Caesar, worthy Mecaenas! 175My
honourable friend, Agrippa!
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ドミシャス・イナバーバス
シーザーの腹心、ミシーナス、
それにわが友アグリッパか。
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AGRIPPA
Good Enobarbus!
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アグリッパ
やあ、イナバーバス。
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MECAENAS
We have cause to be glad that matters are so well
digested. You stayed well by 't in Egypt..180
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ミシーナス
ことがうまく収まってうれしい限りだ。エジプトでは楽しまれましたか。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Ay, sir; we did sleep day out of countenance, and
made the night light with drinking.
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ドミシャス・イナバーバス
ええ、昼は眠りとおして昼の顔色をなからしめ
夜は夜通し飲んで夜を浮かれさせました。
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MECAENAS
Eight wild-boars roasted whole at a breakfast, and
but twelve persons there; is this true?185
|
ミシーナス
朝食に八匹のイノシシを丸焼きにして食べる人は12人しかいなかったんだって、本当か。
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DOMITIUS ENOBARBUS
This was but as a fly by an eagle: we had much more
monstrous matter of feast, which worthily deserved noting.
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ドミシャス・イナバーバス
これはほんの鷲(わし)と蝿(はえ)のたとえです。宴会ではもっともっとすごいことが沢山ありました。
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MECAENAS
She's a most triumphant lady, if report be square to her.190
|
ミシーナス
とてつもない女性だ、うわさが本当だとすれば。
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DOMITIUS ENOBARBUS
When she first met Mark Antony, she pursed up
his heart, upon the river of Cydnus.
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ドミシャス・イナバーバス
クレオパトラが初めてマーク・アントニーに会ったとき、シドナス川の上で、アントニーの心をすっかり奪ってしまったのです。
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AGRIPPA
There she appeared indeed; or my reporter devised
well for her.
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アグリッパ
異彩を放って現れたそうですね、報告に偽りがなければ。
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DOMITIUS ENOBARBUS
I will tell you.195
The barge she sat in, like a burnish'd throne, Burn'd on the water: the poop was beaten gold; Purple the sails, and so perfumed that The winds were love-sick with them; the oars were silver, Which to the tune of flutes kept stroke, and made200 The water which they beat to follow faster, As amorous of their strokes. For her own person, It beggar'd all description: she did lie In her pavilion--cloth-of-gold of tissue-- O'er-picturing that Venus where we see205 The fancy outwork nature: on each side her Stood pretty dimpled boys, like smiling Cupids, With divers-colour'd fans, whose wind did seem To glow the delicate cheeks which they did cool, And what they undid did. |
ドミシャス・イナバーバス
そのときの話をしよう。
彼女の乗った小船は、磨き上げられた玉座のように 水面(みなも)に輝いていました。船尾(とも)には金箔が打たれ、 帆は紫色に染められ、あたり一面にかぐわしい香りを漂わせるので 風さえも恋の病にかかったかのようでした、櫂(かい)には銀細工が施され、 それをフルートの音色に合わせてこいでゆくと、 櫂が水を打つ度に 水は恋に打たれように速く寄ってきました。クレオパトラ本人は そのすばらしさは筆舌に尽くしがたく、 金糸と絹で織った天蓋の下に横たわっていました、その姿は 想像力が実物よりも美しく見せる かのヴィーナスの絵よりも 美しく輝いていた。両側には 可愛いえくぼの美少年たちがほほえむキューピットのように立って、 色鮮やかな扇であおぎ、その風は涼しくさせるつもりが 優美な頬をかえって上気させて あおぐ効果はないように見えました。 |
AGRIPPA
O, rare for Antony!210
|
アグリッパ
おお、アントニーはさぞ驚いたことでしょう。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Her gentlewomen, like the Nereides,
So many mermaids, tended her i' the eyes, And made their bends adornings: at the helm A seeming mermaid steers: the silken tackle Swell with the touches of those flower-soft hands,215 That yarely frame the office. From the barge A strange invisible perfume hits the sense Of the adjacent wharfs. The city cast Her people out upon her; and Antony, Enthroned i' the market-place, did sit alone,220 Whistling to the air; which, but for vacancy, Had gone to gaze on Cleopatra too, And made a gap in nature. |
ドミシャス・イナバーバス
侍女たちは、海の妖精たちのように
また人魚の群れとなってクレオパトラにかしずき、 それがクレオパトラをいっそう美しく引き立てていた。 人魚のような衣装をした侍女が舵をとっていた。 機敏に船を操るその花のように柔らかい手で触られて 船の綱や帆はふくらんでいた。小船からは 不思議なかぐわしい香りが放たれ 岸辺に漂った。街の人びとはわれ先に クレオパトラに殺到した、アントニーは取り残されて、 市場の玉座に一人座って 口笛を吹いていた、その口笛の鳴る空間も真空にさえならなければ クレオパトラを見に飛んでいって 自然に間隙を作りかねなかった。 |
AGRIPPA
Rare Egyptian!
|
アグリッパ
すごいエジプト人だ。
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DOMITIUS ENOBARBUS
Upon her landing, Antony sent to her,
Invited her to supper: she replied,225 It should be better he became her guest; Which she entreated: our courteous Antony, Whom ne'er the word of 'No' woman heard speak, Being barber'd ten times o'er, goes to the feast, And for his ordinary pays his heart230 For what his eyes eat only. |
ドミシャス・イナバーバス
上陸すると、アントニーは使いをだして、
クレオパトラを夕食に招待した。しかしクレオパトラは 逆に頼み込んでアントニーを客として 迎えることになったのである。紳士のたしなみを心得るアントニーは 女性に頼まれて「否」と言ったことがない、 10回も顔をあたって宴席に行ったのであるが、 食事には手もつけず、 眼で見るばかりで、すっかり心を奪われてしまったのである。 |
AGRIPPA
Royal wench!
She made great Caesar lay his sword to bed: He plough'd her, and she cropp'd. |
アグリッパ
天晴れな女王だ。
クレオパトラは大シーザーでさえ、その剣をベッドの脇へ置かしたのだ。 彼はクレオパトラを耕し、彼女は実を結んだというわけだ。 |
DOMITIUS ENOBARBUS
I saw her once
Hop forty paces through the public street;235 And having lost her breath, she spoke, and panted, That she did make defect perfection, And, breathless, power breathe forth. |
ドミシャス・イナバーバス
わたしは彼女が街の通りを40歩ばかり
飛び跳ねているところを見たことがありました、 息を切らしてあえいでいましたが、 それでも足りないところを完璧にしてしまい 息が切れても、人を惹きつける魅力をかもしていました。 |
MECAENAS
Now Antony must leave her utterly.
|
ミシーナス
もうアントニーは完全に別れなければなりませんね。
|
DOMITIUS ENOBARBUS |
ドミシャス・イナバーバス
とんでもない、絶対に別れないでしょう。
年齢を重ねても彼女は衰えないでしょうし、日々の習慣も 彼女の絶え間ない変貌を飽きさせることはないでしょう。 他の女は食欲も満腹になるが、彼女の場合 満腹にさせても、腹が減ってくる。下劣なことも 彼女にあってはすばらしいものとなります。聖なる司祭も ふしだらな時にも彼女を祝福するでしょう。 |
MECAENAS
If beauty, wisdom, modesty, can settle
The heart of Antony, Octavia is A blessed lottery to him. |
ミシーナス
もし美貌と、知恵と、貞節が一体となって
アントニーの心を落ち着かせるならば、オクタヴィアは すばらしい当り籤(くじ)になりますな。 |
AGRIPPA
Let us go.
Good Enobarbus, make yourself my guest Whilst you abide here. |
アグリッパ
行きましょう。
イナバーバスよ、ここに滞在している間は わたしの客になってくれ。 |
DOMITIUS ENOBARBUS
Humbly, sir, I thank you.250
|
ドミシャス・イナバーバス
身に余るお言葉、ありがとう。
|
Exeunt |
退場 |
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