無知の人生


香典にいくら包んだらいいのか
ひとは知っている
世間とはどういうものかも
心得ている
生きていくのに必要なことは
なんでも心得ている

なんでも知っているから
あんなに堂々と生きているのだ

都合の悪いものは
そっと見ないようにしよう
分からないものは
とりあえず括弧でくくろう
考えることなどなにもない
白黒のつかないもの
疑問が残るようなものは
忘れろ・・・
捨ててしまえ・・・
そうして堂々と世間を生きている

充分に大人になってからも
わたしの人生は無知のままだ

そのなかを
わたしは歩いている
なにかを探している
何かはっきりしたものを
少しでも
本当にお前は知っているのか

二〇一〇年四月

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