初老の男

男はひさしぶりに
ぶらりと本屋へ入る
「読みかえしたい一冊」という本を
手にとって見ている

この世代は似たようなものを読んできているんだなあ
新しいものはないなあ
「シャーロックホームズの冒険」をあげている人もいるが
これって
老後の楽しみに読みかえしたい本なのか?

今になって分かることがある
今さら分かってももうおそいのだが・・・

本当のことを書いてある本なんて
そうあるものではない

それぞれが生きて失敗して無駄をして
自分で掴み取れということか
ああ それにしても・・・
生きるのはもう半ば終わったのだ


一生働いて
ただ年をとっただけの男が
所在なげに
本屋を出てゆく

帰りの電車の中で
膝の上に本を広げたまま
うとうとしている

二00七年六月
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