ピッパラの木の下で

ひとりの沙門が
マガダ国のウルヴェーラーの村に来た
村を流れるネーランジャラー河の岸辺で
ぼろぼろの衣を脱ぎ
身体を洗っているのを村人が見ていた
山の中の長い苦行で
身体はすっかり痩せほそっていた

沙問が一本のピッパラの木の下に座ろうとすると
通りがかった村人が一束の干草を供養した
沙門はそれを座布にして座り
そのまま動かなかった
村娘のスジャータは家に取って返し
乳粥を器に入れて沙問に供養した
まだ若い沙門はゆっくり飲み干すと
また座って動かなくなった
日は高く
木の下は涼しい風が吹いていた

スジャータは毎日ピッパラの木の下にゆき
乳粥を供養した
沙問は少しずつ体力を回復してゆくようだった

そうして沙問は何日も座り続けた
日は高く
木の下は涼しい風が吹いていた
ネーランジャラー河はゆったり流れていた

ウルヴェーラーの村に幸あれ

二00七年四月
五月十二日追加更新
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ピッパラの木(写真) ゴータマ仏陀がその下で正覚を得たことから、菩提樹と呼ばれている。仏陀がその下に座った木はもっと大きかったように勝手に想像している。クリックすると拡大します。写真はあるサイトから借りました。
ピッパラの木