あるいはグノースシス派について
日曜日の午後
図書館へ行き
注文していた本を借り出す
千六百年の間エジプトの砂漠で眠っていた
パピルスの本が発見された
その中に歴史の片隅で噂になっていた
ユダの福音書があったのである
原始キリスト教時代に異端として排斥され
歴史から消え去った人びとがいた
その人たちはこう考えていた
この世界を創造したのは
全知全能の神ではない
この世界を創造したのは
かなり下級の神だ
この世界を見て
すばらしい世界と呼ぶことが出来るだろうか
・・・
これは失敗作だ
ああ わたしはまったく彼らに同意する
喫茶店に入り
コーヒーを何杯も飲みながら
興奮してうなずく
この世界はなにかのはずみで
気まぐれに創られたのだ
生き残ったものが
正しいわけではない
正しいものが
生き残ったわけでもない