めだか

めだかは五匹いた
居間の
陽のあたる窓際の大きな陶器のなかにいて
みな元気そうに泳いでいた

あっと思った
水を替えているとき
藻のなかに
粉をまぶしたように白くなって
一匹浮いていた
いちばん小さな奴だった

自分の都合にかまけて
二週間も水を替えてやっていなかったせいだろうか

しばし思いあぐねて
庭の
梅の木の根元に埋めた
線香はあげましたかと妻の言う

誰にも気づかれず
その時も知られず
めだかは死んだ

二00六年四月記
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