英語力

夕方の京急上大岡駅のホームで
上りの快速電車を待つ

前に並んでいる女性が
片手に持って英語の本を読んでいた
カバーをかけ
まるで日本語の小説を読むように

私はカバンの中に
土曜日の英語勉強会に読む記事が
電子辞書と一緒に入っているのをおもいだす
まだ一行も読んでいない

ああ なんたる英語力の違い!

走り出した電車のなかでその人は
吊り革につかまってずっと英語の本を読み続けていた

無限にあるように思える英語の単語の数々・・・
そのひとつひとつの意味と使用法とニュアンスと
文章になったときの生きた調子と・・・
永久に習得できそうにない
どこまでいっても
輪郭のぼやけた世界をさまよっている感じだ

会社帰りで
四十代と思しき
地味な身なりの
化粧気のないその人の顔を
遠くから
しげしげと見ていた

ああ なんたる英語力の違い
だが
その英語力がその人の人生に大いに寄与してきたようには見えなかった
私の英語力の欠如が
私の人生に大いに寄与したということもなかったように

二00六年三月記
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