『パンセ』を読む

第七章 道徳と教義

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他のだれも、人間が最も優れた被造物であることを知らなかった。人間の優秀さの事実をよく知った一方の人たちは、人々が 自分について自然にいだいている卑しい感情を、卑怯とか忘恩と解釈した。この卑しさがどんなに現実的であるかをよく知った他の 人たちは、人間にとっては同じように自然であるこれらの偉大さの感情を、笑うべき思い上がりとして取り扱った。
一方の人たちは言う。「君たちの目を神に向けよ。君たちに似ていて、自身を崇めさせるために君たちを作ったものを見よ。 君たちは、彼に似たものとなることができるのだ。もし君たちが彼に従おうと欲するなら、知恵が君たちを彼と等しいものと するであろう」と。エピクテトスは言う。「自由人よ、頭を高くせよ」と。そして他の人たちは言う。「君ら卑しい虫けらにすぎない 者よ。目を地に下げて、君らの仲間である獣をながめよ」と。
人間はいったいどうなるのだろう。等しいのは、神となのか、獣となのか。なんという恐ろしい距離だろう。われわれは いったいどうなるのだろう。すべてこれらのことによって、人間が道に迷っていること、本来の場所から堕ちていること、 不安にかられてそれをさがしていること、もはやそれを見いだしえないでいることを悟らない者があろうか。そして、いったいだれが 彼をそこへ向かわせてくれるのだろうか。最も偉い人たちにも、それができなかった。

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公開日2008年3月20日