第六章 哲学者たち
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人間の最大の卑しさは、名誉の追求にある。だが、それがまさに人間の優秀さの最大のしるしである。なぜなら、地上にどんな
所有物を持ち、どんなに健康と快適な生活とに恵まれていようと、人々の尊敬のうちにいるのでなければ、人間は満足しないのである。
彼は、人間の理性を大いに尊敬しているので、地上にどんな有利なものを持とうと、そしてそれと同時に人間の理性のなかにも有利な
地位を占めているのでなければ嬉しくない。これが世の中で最も美しい地位であり、何物も彼をこの欲望からそむかせることはできない。
そして、それが、人間の心の最も消しがたい性質である。
人間を最も見下し、獣と同列に置いた人たちでも、そのことによって人から感心されたり信用されたいと願い、自分自身の
感情でもってみずから矛盾しているのである。何よりも強い彼らの本性は、理性が彼らの卑しさを納得させるよりも、もっと強く、
人間の偉大さを彼らに納得させるのである。
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