『パンセ』を読む

第五章 正義と現象の理由

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世の中で最も不合理なことが、人間がどうかしているために、最も合理的なことになる。一国を治める ために、王妃の長男を選ぶというほど合理性に乏しいものがあろうか。人は、船の舵をとるために、船客の なかでいちばん家柄のいい者を選んだりはしない。そんな法律は、笑うべきであり、不正であろう。ところが、 人間は笑うべきであり、不正であり、しかも常にそうであったから、その法律が合理的となり、公正となる のである。なぜなら、いったいだれを選ぼうというのか。最も有徳で、最も有能な者をであろうか。 そうすれば、各人が、自分こそその最も有徳で有能な者だと主張して、たちまち戦いになる。だから、もっとも 疑う余地のないものにその資格を結びつけよう。彼は王の長男だ。それははっきりしていて、争う余地がない。 理性もそれ以上よくはできない。なぜなら、内乱こそ最大の災いであるからである。

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公開日2008年2月17日