第ニ章 神なき人間の惨めさ
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われわれは、自分のなか、自分自身の存在のうちでわれわれが持っている生活では満足しない。
われわれは他人の観念のなかで仮想の生活をしようとし、そのために外見を整えることに努力する。
われわれは絶えず、われわれのこの仮想の存在を美化し、保存することのために働き、ほんとうの存在のほうを
おろそかにする。そして、もしわれわれに、落ち着きや、雅量や、忠実さがあれば、それをわれわれの
別の存在に結びつけるために、急いでそれを知らせる。それを別のほうに加えるためには、われわれから
離すことだってしかねないのである。勇敢であるという評判をとるためには、進んで臆病者にだって
なるだろう。別のほうと両方ともなければ満足できず、しばしば、別のほうのために本物のほうと取り換えさえする
というのは、われわれ自身の存在が虚無であることの大きなしるしである。なぜなら、自分の名誉を保つために
死のうとしない者は、恥知らずということになるだろうから。
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