第一章 精神と文体とに関する思想
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文体。
自然な文体を見ると、人はすっかり驚いて大喜びする。なぜなら、
一人の著者を見るのを期待していたところを、一人の人間を見いだすからである。
反対に、よい趣味を持ち、書物を見て一人の人間を見いだそうと思っていた人たちは、一人の著者
を見いだして全く意外に思う。<君は人としてよりも詩人として語った>(1)
自然のままであらゆることについて語りうる、神学についてさえ語れるのだ、ということを自然に教えて
やる人たちは、自然というものを大いに高めてやっているのである。
(1)ペトロニウス(一世紀のローマの政治家・小説家)『サティリコン』九十。原意
とずれているので、何かからの孫引きであろうと言われている。
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