私の万葉集 巻第十ニ

物に寄せて思ひをぶる

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2966

くれないの 薄染うすぞめのきぬ あさらかに 相見あひみし人に 恋ふるころかも

色のイメージが美しく、あとはほのかな思いをさらりと詠っている。
2966
―クレナイはべにばな。
薄染めの衣―以上に二句、浅ラカを起こす序。色の薄いことをアサシともいうのでかけた。
浅らかに―あまり深く思い入れずに。
3125

ひさかたの 雨の降る日を かどに 蓑笠みのかさ着ずて る人やたれ

3125
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3126

巻向まきむくの 穴師あなしの山に 雲つつ 雨は降れども 濡れつつそ

勿論、上が家で待っている女性の歌、下が訪れてきた男性の歌。雨の降る日に、蓑笠を着けずに女の家に行ったときの問答歌。途中で雨が降ってきたのであろうか。
3126
巻向―奈良県桜井市の三輪山東北地帯、小さな山が幾つかある。
穴師の山―巻向にある山の一つ。
雲居つつ―雲居ルは雲がかかる意。居ルは、人や鳥獣だけでなく、雲や霞、水など動くべきものが、一時、停滞することをいう。このツツは継続を表す。
3213

十月かみなづき しぐれの雨に れつつか 君がくらむ 宿やどるらむ

解説の訳は、「初冬のしぐれの雨に濡れながら、君は旅をしていることだろうか、それともどこか宿を借りているだろうか」
なんでもない歌であるが、妻の心配とともに秋の野を旅する夫の情景が浮かんでくる。
3213
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巻第十ニ終了。4首採集―全380首。

更新2007年8月9日