ある遍路日記  第32日目

2002年12月22日(日)  
曇り 風やや強し

今日は、札所はない。次の札所まで83kmあり、途中で宿をとらなければならない。海沿いの国道を快適に歩く。

案内書にあり。「山と海に囲まれ、人家もなく、強風が吹きつけ、波の砕け散る音が響き渡る。行けども行けども、 藍色の海原が視界から離れない。波が寄せ、返すその度に、石がゴロゴロと押し戻されている。難所である。

かっては大変な難所だった 室戸崎から東洋町への海沿いの道
かっては大変な難所だった
室戸崎から東洋町への
海沿いの道
アスファルトの国道が、 この時ばかりは有り難いと感じられる。昔の遍路たちは、波の音に怯え、石で足を傷つけながら、先を急いだという。・・・・ 遠い昔、海岸を巡る辺地修行の流れがあった。海の彼方にあるものを見つめ歩くうちに、超人的な霊力が備わるという教えであった。 この辺地が辺路となり、遍路となったという説がある。長い道、恐ろしい波の音。それは辺地修行そのものである。」 (『四国八十八ヵ所を歩く』竹内鉄二著・山と渓谷社)

今日は沢山の遍路さんに会った。暗いうちに中年の男性2人、昼頃かけあしでやって来る遍路(これはあとで聞いたのだが、 走って八十八箇所を回っている人らしい)、宿毛の出身で正月の同窓会行くため今日が初日で歩いているという大阪の女性、 菅笠をかぶり金剛杖を薙刀のように構えて姿勢よく歩いてくる女性、みんな順打ちの人だ。

東洋町の路傍の石仏
東洋町の路傍の石仏

東洋町に入り、道路脇でぽんかんの箱詰めをしている人に挨拶したら、ぽんかんのお接待を受けた。食べながら行きなさい、 こうして半分に割ってから食べるのだと教えてくれた。これから3月までがシーズンだそうだ。さらに歩いてゆくと、 小柄な女性の遍路さんから、逆打ちの人に会えてうれしい、ジュースでもどうぞ、と言って200円のお接待を受けた。 恐縮しているとこともなげに、お大師さんのお導きです、歩いている人に差し上げているのです、と言う。お札 (ふだ)が切れていて、失礼した。

 東洋大師を打つ。貧しそうな小さな寺で、真言宗でありながら護摩堂がない、その創建の寄付を募っていた。 歩き遍路のために遍路無料宿泊が出来ると聞いていたので、一度は挑戦すべく予約していたが、まだ日は高く歩けそうだったので、 その旨言って失礼する。どうぞ先へ行きなさい、まだ明るいし遍路はそうですから、と40代の屈強そうなお坊さん。 檀家はいるのだろうか、生活費はどうしているのだろう、毎日の日課はどのようになっているのだろう、奥さんは居るのかなあ。

本日の行程

民宿室戸荘
06:00
32.2km

東洋大師
16:00
9.1km

民宿えびす
18:00

距離 41.3km 所要時間 12:00