ある遍路日記  第13日目

2002年5月9日(木)  
晴れ

午前中また海沿いの道を歩く。何人かのお遍路さんとすれ違う。皆順打ちの人だ。円明寺の境内で、30代の男性のお遍路さんに会う。 しっかり歩き支度をし、足は珍しく白い地下足袋を履いていた。今夜はどこかで野宿する予定と言う。海の道の話をすると、 自分は広島出身だが、瀬戸内海を見るのは久しぶりだそうだ。静かな話し方をする人だ。別れてからお接待してあげればよかったと思う。 いつも私はタイミングが遅れてしまう。

太山寺 山門の奥が国宝の本堂
太山寺
山門の奥が国宝の本堂

太山寺は仁王門をくぐってから、本堂まで350mあり、奥行きの深いいかにも寺らしい寺だ。仁王門は鎌倉時代の建築、 本堂は国宝で堂々たる造り。静かな境内でゆっくり休憩する。

石手寺までの途上、用水路沿いの木陰に長椅子が置いてあったので休憩する。農家の主婦がもっこで雑草を捨てているのを眺 めていると、近寄ってきて挨拶する。ソラマメの煮たのがありますがお口に合うかどうか食べますかと言う。 家から取って来るからちょっと待っているように言い、しばらくしてタッパに一杯のソラマメを持ってきてくれ、 自分の分までお参りして欲しいと言って、小銭を預かった。名前を聞くと、人は宮ちゃんと呼んでいると言う。

石手寺を打って、道後温泉の近くにある松山ユースホステルにチェックインする。事前予約していたのだが、 間違って一日早く来たようだ。ペアラントは松山ユースホステル神泉国共和国大統領平野博昭と称している。 なにやら大変ユニークな人のようだ。スプーン曲げをやり、環境問題に取り組み、霊の世界に出入りし、宇宙の話も得意のようだ。 美味いうどん屋さんはないかと聞いたら、うどんは讃岐の一言、なるほどもっともなことだ。ここは伊予の国だ。

道後温泉に行く。入浴料300円、タオル石鹸50円で借りて入る。1Fが浴場で神の湯と言う。浴場は今ではさほど広くもないが、 ほぼ同じ広さで東の湯と西の湯と分かれてある。湯殿に「坊ちゃん泳ぐべからず」の札がかかっているのが可笑しかった。 上をのぞいて見たが、2Fは大広間、3Fは和室の小部屋になっている。ここで漱石たちは、湯に入り、茶を飲み、菓子を食べたのだ。 案内にあり、道後温泉は明治27年築、漱石は明治28年4月松山中学へ赴任、その頃の道後温泉は木の香も新しい建物であった。 「道後温泉はよほど立派な建物にて、八銭出すと3階に上がり、茶を飲み、菓子を食い、湯に入れば頭まで洗ってくれるような始末、 随分結構に御座候」と書き送っている。

子規記念館を見たかったが、9時開館なのであきらめる。

本日の行程

YH北条水軍
0800
11.0km

53番 円明寺 えんみょうじ
11:00
2.3km

52番太山寺(たいさんじ)
12:00
10:3km

51番石手寺(いしてじ)
16:15
1.0km

松山YH
17:00

距離 24.6km
所要時間 9:00