ある遍路日記  第8日目

2002年1月13日(日)  
晴れ

朝、快調に歩く。般若心経を詠む練習をしながら歩いていると、逆打ちですか、お気をつけて、と声をかけてくれたのは、 30代の女性のお遍路さん。8時頃だったので、このお遍路さんは昨夜どこに泊まったのだろうかと思う。相手も快調な足取りだ。

椿堂から脇道を入ってどんどん登って行き、途中トラックを止めて道を確認しながら行く。このトラックの若者からもみかん のお接待を受けた。順調に歩いていたが、頂上近くで道が二手に分かれるところで、迷った末に違った道を選んだらしい。 人家もなくしばらく歩いてからやっとみかん畑で農作業している人に聞いて、ひとつ手前の山を歩いていることがわかった。 結局かなり遠回りして三角寺にたどり着く。

三角寺からの山を下りる途中、20代の女性の歩き遍路さんに会い、挨拶を交わす。若いのに偉いものだと思う。 山腹からは川之江市が一望に見渡せる。みかん畑を下り切ると国道11号線に出る。あとはこの単調な道をどこまでもひたすら歩く。 自分はどこを歩いているのかよく分からなくなる。信号待ちでいったん止まってまた歩き始めるときには、びっこをひいている。 ただひたすら歩く、宿まであと何キロだろう。歩いていると市町村の名前は関係なくなる。地図の上で、自分はどこに居るのか分からず、 目的地までの道順と時間だけが頭にある。

国道沿いの石仏
国道沿いの石仏

歩いて見なければ分からないこともあるのだ、と勝手なことを思いつく。四国巡礼するくらいなら、般若心経くらい 読めなくてどうする、これは日本人のたしなみではないか、とも思う。そんなことを思いながらひたすら歩く。途中国道沿いの路傍に、 石仏を二つ見つける。それぞれしゃがんでじっと見る。道路の反対側に回って写真に撮る。少し元気が出る。

何にこの 六十路が見えて 遍路かな

ゆっくりゆっくりただひたすら歩いて、宿に着いたときは、真っ暗だった。

旅館の夕食。刺身、蛸の酢の物、ぶりの照り焼き、鳥のから揚げ、アサリのお汁、あんまり多すぎて食べきれない。 歩いているとそんなにご馳走はいらなくなる。何杯もおかわりできるご飯と風呂があればいい。 根香寺で会った精進の若い女性なら食べられるものは一品もない。

本日の行程

民宿岡田
07:00
14.4km

65番 三角寺 さんかくじ
12:15
17.8km

松屋旅館
18:30

距離 32.2km
所要時間 11:30