ある遍路日記  第7日目

2002年1月12日(土)  
快晴 無風

朝、宿のおかみさんが言っていた、若い頃よく雲辺寺に登りましたよ、朝8時に出て昼過ぎには戻ってここで食事していました。 実際に登ってみると、すごい健脚だと思う。私は登るだけでそのくらいかかっているのだから。

大興寺から雲辺寺への道に、里程を示す石仏が一定の間隔であった。どれにも花が生けてあり、これが頂上まで続いている。 丁石(ちょうせき)と言う。案内に、丁は109.09m、里は3927.27mとあった。まさかと思うが、 確かに100m単位でおいてあった。

雲辺寺への山道で 空を見る
雲辺寺への山道で
空を見る

途中から完全な遍路道になる。四国の道の休憩所が適当な間隔であり、お接待でもらった餅を食べドリンク剤を飲みながら、 ひとり休憩する。誰も通らない。空が抜けるように青い。静かだ。鳥の鳴く声が聞こえ、虫の動く音がする。

雲辺寺は標高910mの山頂にある。境内にはいたるところ五百羅漢の真新しい石像が、荷解きしたばかりで置いてある。 中国の福建省で造っているとか。出来た順番に送ってくるのだろう、まだ全部が完成していないのだと言う。 客寄せの為にのみ造ったとしか思えない大きな毘沙門天(びしゃもんてん)をのせた展望台があり、 入場料200円とあるので遠慮していると、なかに居た僧侶がお接待だから入りなさいと言う。 背が高く長い白髪のひげをはやした堂々たるお遍路さんと話していた。幸月という人で、今日が80歳の誕生日だと言う。 千日巡礼と称していたがもう5年も回っているのだそうだ。有名なお遍路さんらしい。俳句集や写真集もあって見せてもらった。 戦地での句が沢山あった。

寺に隣接してスキー場があるのには驚いた。何もかも観光のために走っている感じがするところだ。

下りは全く人手の入っていない遍路道で、石がごろごろ転がり、落ち葉が積んでいる。道中誰にも会わない。 お接待のみかんや餅を食べ小休止しながらゆっくり下りる。

民宿岡田屋に着くと、主人がすぐ金剛杖の洗う場所を示し、さっとタオルを出してくれ、家に入ると部屋のなかに立てかけてくれた。 はじめて遍路宿の主人らしい人にあった。自分は勤め人であったが、奥さんが亡くなってから独りで民宿をやっていると言う。 部屋に色々な人の遍路日記があったので、少し読ませてもらう。71歳の人が私より健脚で歩いている。 宿の主人によるとここから雲辺寺まで早い人は、1時間半で行くと言う、どんな人でも2時間半の行程だそうだ。 私はくだりで2時間半かかっている。

朝、お接待ですと言って、おにぎりを包んでくれたのは大変ありがたかった。

本日の行程

大丸旅館 
08:00
2.5km

67番 大興寺 だいこうじ
08:30
9.8km

66番雲辺寺(うんぺんじ)
13:00
5.9km

民宿岡田
17:00

距離 18.2km
所要時間 9:00