ある遍路日記  第3日目

2002年1月8日(火)  
晴れのち曇り 一時雪まじり 風強し

M氏と一緒に朝食をとる。食事中も色々話しが尽きない。話好きな人だ。

朝、風が強く、吹き飛ばされそうになりながら歩く。あづまを出てしばらく歩いていると、車が後ろに止まり、 中年の女性からジュースの接待を受ける。

一宮寺からしばらく平地を歩き、道に迷いながらも鬼無(きなし) 駅前に着く。 セルフ食堂に入り、湯だめうどんと稲荷の昼食をする。この地方の普通の昼食だとのちのち分かった。 ここから五色台への登りに入る。見晴らしが良く海も見える。山頂近くでミカン畑が見事なので写真をとっていると、 大ぶりのミカン5個のお接待を頂く。

根来寺への途上のみかん畑
根来寺への途上のみかん畑

根香寺は山の上の寺。お参りを終えて、納経所の前で待っていると、逆打ちですか、道に迷っていないかMさんが心配していましたよ、 と若い女性が声をかけてきた。見るとお遍路さんである。白峰寺でM氏と会ったのだと言う。近くの喝破禅道場に一緒に泊まらないか と何度もすすめるので、とりあえず一緒に行くことにした。道々話しを聞くと、若い女性は順打ちで40日目であると言う。 もう直ぐ結願(けちがん)である。はじめは泣く泣く歩いていたそうだ。精進でやってゆこうと決めたので、 食事が大変だった、とくに高知では魚がきれいで美味しそうで、精進の誓いを後悔したといっていた。宿坊でも精進はやっていない ところが多いから2〜3食はいつも用意して、歩いてきたそうだ。歩幅の小さいチョコチョコした歩き方で、よくもここまで歩いてきたなあ と感心する。まして何があったか精進料理のみでやることは大変なことだ。喝破道場では、青少年の厚生施設を兼ねて禅道場をやって いるらしい。留守のおばさんは、ここは座禅をするところですよと言っていた。若い女性ともっとゆっくり突っ込んだ話もしたかったが、 正直なところかなり疲れていて座禅をする気にはなれなかった。おばさんに予約してある簡保の宿の話をしたら、 4キロ位だから1時間もあれば充分で、逆打ちならそちらに泊まる方が良いとすすめてくれたので、恐縮しまた残念そうな若いお遍路さん と別れて、17時頃から歩き始める。歩き始めてすぐ、駐車場に停まっていた車から出てきた中年の男性から、缶ジュースのお接待を頂く。

あたりはすっかり暗くなり、下界の家々の明かりが見え始める。道の両側の木々が黒々と立ち、風が吹くたびにゴウゴウなっている。 まるで宮沢賢治の世界だと思いながら歩いた。心細くなってきたが、山の上の車道だから間違うはずはないと思い、 とにかく前へ前へと休まず歩き続ける。時折下界の家々の明かりが樹の間を通して、はるか下のほうに見えかくれする。 いきなり宿の明かりが見えた時は、さすがにほっとした。

本日の行程

BHあづま
07:30
5.3km

83番一宮寺(いちのみやじ)
09:30
13.3km

82番 根来寺 ねごろじ
16:30
5.1km

坂出簡保の宿
18:30

距離 23.7km
所要時間 11:00