ある遍路日記  第2日目

2002年1月7日(月)  
晴れ

志度寺には見事な五重塔があった。早朝、寺の世話をしているらしい年配の女性からいきなり、ジュースでもと言って 200円のお接待を頂いた。
「歩いている人にはお接待をする事にしているんです。」
また仁王門の外で、ザックを下ろして写真を撮っていると、京都から来た人で荷物を盗られた人がいる、 気い付けやと忠告される。

国道沿いに八栗寺へ向かう。腰から下がすでに重い。Canadianという名の珈琲館を見つけて入る。濃い美味しいコーヒーだった。

志度寺の五重塔
志度寺の五重塔

八栗寺の境内をあれこれ回って仁王門で一息ついていると、
「逆打ちですか」
と声をかけてくれた人がいた。 上下白衣で菅笠を背に負った、小柄な年配のお遍路さんだった。私のぎこちない動作をどこからか見ていたのだろう。 話をするうちに、大変な人だと分かってきた。八栗寺の背後は五剣山と呼ばれる屏風を立てたような垂直の岩山になっている。 顔をそちらのほうへ向けて、あそこへ行って来ました、と言う。行場になっているらしい。今は事故が多く普通立ち入り禁止に なっているそうだが、寺の人を説得し特別の許可を得て登ってきたと言う。ちょっと想像できなかった。 ご一緒にどうですかと同行を誘われたが、マイペースで行きたいと思っていたので、丁重に断ったあとで直ぐ後悔した。 同伴者がいるのもいいではないか。

屋島寺までは道なりに歩いていたつもりだったが、街中で道に迷う。いったん国道まで出てから寺の入り口を 尋ね、やっとのことで参道を登っていると、さっきのお遍路さんが若者と一緒に下りてくるのに出会った。 立ち話をして分かれたが、屋島寺を打って麓まで下りてくると、待っていてくれていたのかまた出会った。若者は北海道の出身で、 順打ちでここまで来たと言う。さっそくベテランのお遍路さんに今夜の宿を一緒にしたい旨申し出る。

若者と別れて二人で歩き始める。夜になって高松市内を通り抜けて栗林(りつりん)公園まで歩く道々色々なお話を聞いた。横須賀市のM氏と言う。 もう何度も回っているらしい、回数をきいても教えてくれなかったが。遍路の世界にも虚栄心や商業主義が渦巻いていることから、 山岳修行に至るまで様々な話題が尽きない。足にまめができそうな旨言うと、宿で部屋まで来てテーピングの仕方を詳しく教えてくれた。 これがのちのち実に役に立った。テーピングをしてからは、まめの心配もなく歩けて本当に助かった。歩き遍路必携の 『四国遍路ひとり歩き同行二人』(へんろみち保存協力会編宮崎建樹氏著)の本の存在も初めて知り、 この先の行程の何日分かをコピーさせてもらった。宿で履いている靴をそっと見せてもらったが、特別のものは履いていなかった。 安物で間に合わせているよ、一回まわると一足履きつぶすが、と言っていた。

本日の行程

民宿ながお路
07:00
7.0km

86番志度寺(しどじ)
09:00
7.6km

85番 八栗寺 やくりじ
11:30
7.2km

84番 屋島寺 やしまじ
16:00
8.4km

BHあづま
19:00

距離 30.2km
所要時間 12:00