源氏物語 夢浮橋 注釈
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54 帚木
 
さらに、しろしめすべきこととは、いかでかそらにさとりはべらむ
夢にも(薫にとって)関わり合いのおありであろうこととは、どうして当てもなく気づくことでございましょう。
あるべからむことはものせさせたまはむに
いかようにもしかるべき処置を、おとりなさるについては
すずろなるやうには思すまじきゆゑもありけり
おかしなことのようにお思いになってはならぬわけもあることなのです。自分は出家した浮舟の師僧なのだからという気持から言う。「すずろなる」つまらぬこと、くだらぬこと。思いがけないこと、予期せぬこと。関係がない、見ず知らずの。
まがふべくもあらず、書き明らめたまへれど、異人は心も得ず
間違えようもなく、僧都ははっきりお書きになっているが、浮舟以外の人には何のことか分からない。
世に知らず心強くおはしますこそ
見たこともないほど強情でいらっしゃること。
法の師と尋ぬる道をしるべにて思はぬ山に踏み惑ふかな
/仏の道の師として横川に僧都を尋ねたのですが、その僧都の導きで、思いも寄らぬ恋の山にうろうろしています(新潮)/ 仏法の師と思って尋ねて来た道ですが、それを道標としていたのに思いがけない山道に迷い込んでしまったことよ(渋谷)
わが御心の思ひ寄らぬ隈なく、落とし置きたまへりしならひに、とぞ本にはべめる。
ご自身が何もかも慎重にお考えの上、浮舟を宇治のような所に捨ててお置きになっていた、そんな経験から。言いさした形。「とぞ本にはべめる」と、もとの本にあるようです。写本の筆者が、原本にはこうあった、とする注記であるが、物語の大尾を示す常套句であったと考えられる。『宇津保物語』の大尾「楼の上の下」も、「となむ本にこそはべるめれ」と結ばれている。
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54 夢浮橋
公開日2021年5月10日