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匂宮は、長谷寺の初瀬詣でに出かける。ずっと以前の願果たしだったが、ほんとうの目的は薫から聞いた宇治の姫君たちだった。
匂宮は帝や后に格別の寵愛を受けていたので、殿上人がこぞってお供した。源氏から夕霧が伝領した邸が、宇治の山荘の川向にあり、夕霧たちも子息そろって歓待した。匂宮一行はそこに泊まって、管弦の遊びをした。八宮は川向うから昔懐かしく聞こえて来る楽の音を聞いた。
匂宮は川向こうに文を出した。八宮は中の君に返事を出すよういう。以後、匂宮と中の君の文のやり取りがなされる。
薫は八宮の山荘に出向いて、お迎えした。弁尼をよびだして、大君と歌の交換をする。
薫は八宮から、姫たちの後見を託され、承諾した。
八宮は、娘たちに次のような訓戒をのこして、山寺へ行った。軽々に山里を出てはいけない、ここで生涯を終えるのが定めと思いなさいと。
おぼろけのよすがならで、人の言にうちなびき、この山里をあくがれたまふな。ただ、かう人に違ひたる契り異なる身と思しなして、ここに世を尽くしてむと思ひとりたまへ。ひたぶるに思ひなせば、ことにもあらず過ぎぬる年月なりけり。まして、女は、さる方に絶え籠もりて、いちしるくいとほしげなる、よそのもどきを負はざらむなむよかるべきそうこうするうち、八宮は山寺で修行中、死んでしまう。
(充分に頼りになる人でなくては、人の甘言になびいて、この山里を出てはいけません。ただ、人と違ってこのような特別の定めと思って、ここで生涯を終えようと思いなさい。一途にその気になれば、歳月は何でもなく過ぎてしまうものです。まして女は、女らしくひっそり閉じこもって、不体裁な評判にならないよう非難を浴びないのがかしこい生き方です)
薫は亡くなった八宮の居間に入って、
立ち寄らむ蔭とたのみし椎が本むなしき床になりにけるかな (薫)(46.24)
歌意 出家のあかつきは寄るべき蔭ともお頼り申していた宮は亡くなり、その御座所は、空しく床となっいる。
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
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