源氏物語  椎本 あらすじ 章立て 登場人物

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椎本 あらすじ

薫 23~24歳 宰相中将・中納言

 匂宮は、長谷寺の初瀬詣でに出かける。ずっと以前の願果たしだったが、ほんとうの目的は薫から聞いた宇治の姫君たちだった。
匂宮は帝や后に格別の寵愛を受けていたので、殿上人がこぞってお供した。源氏から夕霧が伝領した邸が、宇治の山荘の川向にあり、夕霧たちも子息そろって歓待した。匂宮一行はそこに泊まって、管弦の遊びをした。八宮は川向うから昔懐かしく聞こえて来る楽の音を聞いた。
 匂宮は川向こうに文を出した。八宮は中の君に返事を出すよういう。以後、匂宮と中の君の文のやり取りがなされる。
 薫は八宮の山荘に出向いて、お迎えした。弁尼をよびだして、大君と歌の交換をする。
 薫は八宮から、姫たちの後見を託され、承諾した。
 八宮は、娘たちに次のような訓戒をのこして、山寺へ行った。軽々に山里を出てはいけない、ここで生涯を終えるのが定めと思いなさいと。

おぼろけのよすがならで、人の言にうちなびき、この山里をあくがれたまふな。ただ、かう人に違ひたる契り異なる身と思しなして、ここに世を尽くしてむと思ひとりたまへ。ひたぶるに思ひなせば、ことにもあらず過ぎぬる年月なりけり。まして、女は、さる方に絶え籠もりて、いちしるくいとほしげなる、よそのもどきを負はざらむなむよかるべき
(充分に頼りになる人でなくては、人の甘言になびいて、この山里を出てはいけません。ただ、人と違ってこのような特別の定めと思って、ここで生涯を終えようと思いなさい。一途にその気になれば、歳月は何でもなく過ぎてしまうものです。まして女は、女らしくひっそり閉じこもって、不体裁な評判にならないよう非難を浴びないのがかしこい生き方です)
 そうこうするうち、八宮は山寺で修行中、死んでしまう。
 薫は後見を託さた立場ながら、何度か宇治へ行っていると、だんだん大君に惹かれ始めている。匂宮は文の返事が誰が書いたのかわからないのであるが、いつも中の君が相手をしているので、何とか近づきたいと薫に仲介をせっつくのだった。

巻名の由来

薫は亡くなった八宮の居間に入って、

立ち寄らむかげとたのみししひもとむなしきとこになりにけるかな (薫)(46.24)
歌意 出家のあかつきは寄るべき蔭ともお頼り申していた宮は亡くなり、その御座所は、空しく床となっいる。

椎本 章立て

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46.1 匂宮、初瀬詣での帰途に宇治に立ち寄る
 如月の二十日のほどに、兵部卿宮、初瀬に詣でたまふ。
46.2 匂宮と八の宮、和歌を詠み交す
 所につけて、御しつらひなどをかしうしなして、碁、双六、弾棊の盤どもなど取り出でて、
46.3 薫、迎えに八の宮邸に来る
 中将は参うでたまふ。
46.4 匂宮と中の君、和歌を詠み交す
 かの宮は、まいてかやすきほどならぬ御身をさへ、所狭く思さるるを、
46.5 八の宮、娘たちへの心配
 宮は、重く慎みたまふべき年なりけり。
46.6 秋、薫、中納言に昇進し、宇治を訪問
/宰相中将、その秋、中納言になりたまひぬ。
46.7 薫、八の宮と昔語りをする
 夜深き月の明らかにさし出でて、山の端近き心地するに、
46.8 薫、弁の君から昔語りを聞き、帰京
こなたにて、かの問はず語りの古人召し出でて、残り多かる物語などせさせたまふ。
46.9 八の宮、姫君たちに訓戒して山に入る
 秋深くなりゆくままに、宮は、いみじうもの心細くおぼえたまひければ、
46.10 八月二十日、八の宮、山寺で死去
 かの行ひたまふ三昧、今日果てぬらむと、
46.11 阿闍梨による法事と薫の弔問
 阿闍梨、年ごろ契りおきたまひけるままに、後の御こともよろづに仕うまつる。
46.12 九月、忌中の姫君たち
  明けぬ夜の心地ながら、九月にもなりぬ。野山のけしき、
46.13 匂宮からの弔問の手紙
  御忌も果てぬ。限りあれば、涙も隙もやと思しやりて、
46.14 匂宮の使者、帰邸
  御使は、木幡の山のほども、雨もよにいと恐ろしげなれど、
46.15 薫、宇治を訪問
 中納言殿の御返りばかりは、かれよりもまめやかなるさまに聞こえたまへば、
46.16 薫、大君と和歌を詠み交す
  御心地にも、さこそいへ、やうやう心しづまりて、よろづ思ひ知られたまへば、
46.17 薫、弁の君と語る
 ひきとどめなどすべきほどにもあらねば、飽かずあはれにおぼゆ。
46.18 薫、日暮れて帰京
 今は旅寝もすずろなる心地して、帰りたまふにも、
46.19 姫君たちの傷心
  兵部卿宮に対面したまふ時は、まづこの君たちの御ことを扱ひぐさにしたまふ。
46.20 歳末の宇治の姫君たち
 雪霰降りしくころは、いづくもかくこそはある風の音なれど、
46.21 薫、歳末に宇治を訪問
  中納言の君、「新しき年は、ふとしもえ訪らひきこえざらむ」と思しておはしたり。
46.22 薫、匂宮について語る
 「宮の、いとあやしく恨みたまふことのはべるかな。
46.23 薫と大君、和歌を詠み交す
 「かならず御みづから聞こしめし負ふべきこととも思うたまへず。
46.24 薫、人びとを励まして帰京
 「暮れ果てなば、雪いとど空も閉ぢぬべうはべり」
46.25 新年、阿闍梨、姫君たちに山草を贈る
 年替はりぬれば、空のけしきうららかなるに、汀の氷解けたるを、
46.26 花盛りの頃、匂宮、中の君と和歌を贈答
  花盛りのころ、宮、「かざし」を思し出でて、その折見聞きたまひし君たちなども、
46.27 その後の匂宮と薫
 御心にあまりたまひては、ただ中納言を、とざまかうざまに責め恨みきこえたまへば、
46.28 夏、薫、宇治を訪問
 その年、常よりも暑さを人わぶるに、「川面涼しからむはや」と思ひ出でて、
46.29 障子の向こう側の様子
 まづ、一人立ち出でて、几帳よりさし覗きて、この御供の人びとの、とかう行きちがひ、

椎本 登場人物

  • 薫  かおる 源氏の子  ····· (呼称)宰相中将・宰相の君・中将・中納言・中納言殿・中納言の君、
  • 匂宮  におうのみや 今上帝の第三親王  ····· (呼称)兵部卿宮・親王・三の宮・宮、
  • 八の宮  はちのみや 桐壷帝の第八親王  ····· (呼称)主人の宮・宮・親王・聖、
  • 大君  おおいきみ 八の宮の長女  ····· (呼称)姉君・姫君、
  • 中君  なかのきみ  八の宮の二女 ····· (呼称)中の宮・君・女、
  • 阿闍梨  あじゃり  ····· (呼称)阿闍梨・聖
  • 弁の尼君  べんのあまぎみ 柏木の乳母の娘  ····· (呼称)老い人・古人、

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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源氏物語  椎本 あらすじ 章立て 登場人物

公開日2020年9月28日/ 改定2023年9月5日