源氏物語  夕霧 あらすじ 章立て 登場人物

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夕霧 あらすじ

源氏 50歳 准太上天皇

 夕霧は、亡き柏木の親友として、下心もあって、あとに残されたものの面倒を見ようとしている。柏木の北の方だった朱雀院の二の宮の落葉の君である。母の一条の御息所と一緒に住んでいた。夕霧の恋心は、柏木・横笛の巻に続く。
 御息所は物の怪がついて病がちであったので、修行僧に物の怪を懲らしてもらうべく、山の近くの小野の山荘に移った。夕霧は二の宮の後見人のように装って、二人を訪問する。遅くなっても居続けて、二の宮の部屋に侵入して、意中を打ち明けるが、宮は聞こうとしない。宮の部屋に忍び込んで、朝まで迫るが、結局何ごともなく、見かけは朝帰りのようになって、帰るのだった。
 その姿を祈祷僧が見て、御息所の知るところとなり、御息所は宮の後見を夕霧に託そうかと迷いながらも、それを許すような文を出す。そうこうするうち母の御息所は亡くなった。
夕霧は葬儀や法事などの手配をあれこれとして、簡素な式を盛大なものにした。
夕霧は強引に宮との結婚を策して、車などを手配し、宮を一条の邸に連れ戻す。宮は塗籠に入って、夕霧を避けるが、夕霧はついには塗籠に入り、翌日も一条邸に居続けて、一見して二人の結婚が成立したように見えるのだった。宮は心を許さなかったが、成り行き上諦める。
 堅物だった夕霧の恋は、周囲を驚かし、雲居の雁は怒って、相手の返書を隠したりするが、ついには嫉妬にかられて、実家へ帰ってしまう。
 夕霧と雲居の雁の間には、七人(4男3女)の子がいて、みな出来がよかった。ほかに内侍腹に五人(2男3女)の子がいた。二人の子は花散る里が引き取って育てていた。源氏も可愛がっていた。

巻名の由来

夕霧が小野山荘を訪れ、霧で帰れないと落葉の君に詠いかけ、宮がそれに答える。

山里のあはれを添ふる夕霧に立ち出でむそらもなきここちして (夕霧) (39.4)
歌意 山里のあわれをさそう夕霧が立ち込めて帰る気になれません
山賤のまがきをこめて立つ霧も心そらなる人はとどめず  (落葉の君) (39.4)
歌意 山賤の籬に立ち込める霧も心がそらの人が出立するのは止めないでしょう

夕霧 章分け

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39.1 一条御息所と落葉宮、小野山荘に移る
 まめ人の名をとりて、さかしがりたまふ大将、この一条の宮の御ありさまを、
39.2 八月二十日頃、夕霧、小野山荘を訪問
 八月中の十日ばかりなれば、野辺のけしきもをかしきころなるに、山里のありさまのいとゆかしければ、
39.3 夕霧、落葉宮に面談を申し入れる
 宮は、奥の方にいと忍びておはしませど、ことことしからぬ旅の御しつらひ、浅きやうなる御座のほどにて、
39.4 夕霧、山荘に一晩逗留を決意
 日入り方になり行くに、空のけしきもあはれに霧りわたりて、山の蔭は小暗き心地するに、ひぐらしの鳴きしきりて、
39.5 夕霧、落葉宮の部屋に忍び込む
 さて、  「道いとたどたどしければ、このわたりに宿借りはべる。同じうは、この御簾のもとに許されあらなむ。
39.6 夕霧、落葉宮をかき口説く
聞き入れたまふべくもあらず、悔しう、かくまでと思すことのみ、やる方なければ、のたまはむことはたましておぼえたまはず。
39.7 迫りながらも明け方近くなる
 風いと心細う、更けゆく夜のけしき、虫の音も、鹿の鳴く音も、滝の音も、一つに乱れて、艶あるほどなれど、
39.8  夕霧、和歌を詠み交わして帰る
月隈なう澄みわたりて、霧にも紛れずさし入りたり。浅はかなる廂の軒は、ほどもなき心地すれば、
39.9 夕霧の後朝の文
 かやうの歩き、慣らひたまはぬ心地に、をかしうも心尽くしにもおぼえつつ、殿におはせば、女君の、
39.10 律師、御息所に告げ口
 もののけにわづらひたまふ人は、重しと見れど、さはやぎたまふ隙もありてなむ、ものおぼえたまふ。
39.11 御息所、小少将君に問い質す
 律師立ちぬる後に、小少将の君を召して、
39.12 落葉宮、母御息所のもとに参る
 渡りたまはむとて、御額髪の濡れまろがれたる、ひきつくろひ、単衣の御衣ほころびたる、着替へなどしたまひても、
39.13 御息所の嘆き
 苦しき御心地にも、なのめならずかしこまりかしづききこえたまふ。
39.14 御息所、夕霧に返書
 かしこよりまた御文あり。心知らぬ人しも取り入れて、
39.15 雲居雁、手紙を奪う
 大将殿は、この昼つ方、三条殿におはしにける、今宵立ち返り参でたまはむに、
39.16 手紙を見ぬまま朝になる
 とかく言ひしろひて、この御文はひき隠したまひつれば、せめても漁り取らで、つれなく大殿籠もりぬれば、
39.17 夕霧、手紙を見る
 ひぐらしの声におどろきて、「山の蔭いかに霧りふたがりぬらむ。あさましや。今日この御返事をだに」と、いとほしうて、
39.18 御息所の嘆き
 かしこには、昨夜もつれなく見えたまひし御けしきを、忍びあへで、後の聞こえをもつつみあへず恨みきこえたまうしを、
39.19 御息所死去す
  いとわりなくおしこめてのたまふを、あらがひはるけむ言の葉もなくて、ただうち泣きたまへるさま、おほどかにらうたげなり。
39.20 朱雀院の弔問の手紙
 所々の御弔ひ、いつの間にかと見ゆ。
39.21 夕霧の弔問
 ほどさへ遠くて、入りたまふほど、いと心すごし。
39.22 御息所の葬儀
 今宵しもあらじと思ひつる事どものしたため、いとほどなく際々しきを、いとあへなしと思いて、
39.23 夕霧、返事を得られず
 山下ろしいとはげしう、木の葉の隠ろへなくなりて、よろづの事いといみじきほどなれば、おほかたの空にもよほされて、
39.24 雲居雁の嘆きの歌
 女君、なほこの御仲のけしきを、
39.25 九月十日過ぎ、小野山荘を訪問
 九月十余日、野山のけしきは、深く見知らぬ人だに、ただにやはおぼゆる。
39.26 板ばさみの小少将君
 この人も、ましていみじう泣き入りつつ、
39.27 /夕霧、一条宮邸の側を通って帰宅
 道すがらも、あはれなる空を眺めて、十三日の月のいとはなやかにさし出でぬれば、
39.28 落葉宮の返歌が届く
 日たけてぞ持て参れる。紫のこまやかなる紙すくよかにて、小少将ぞ、
39.29 源氏や紫の上らの心配
 六条院にも聞こし召して、いとおとなしうよろづを思ひしづめ、
39.30 夕霧、源氏に対面
 大将の君、参りたまへるついでありて、思ひたまへらむけしきもゆかしければ、
39.31 父朱雀院、出家希望を諌める
 かくて御法事に、よろづとりもちてせさせたまふ。
39.32 夕霧、宮の帰邸を差配
 大将も、 「とかく言ひなしつるも、今はあいなし。かの御心に許したまはむことは、難げなめり。
39.33 落葉宮、自邸へ向かう
 集りて聞こえこしらふるに、いとわりなく、あざやかなる御衣ども、人びとのたてまつり替へさするも、
39.34 夕霧、主人顔して待ち構える
 おはしまし着きたれば、殿のうち悲しげもなく、人気多くて、あらぬさまなり。
39.35 落葉宮、塗籠に籠る
 かく心ごはけれど、今は、堰かれたまふべきならねば、やがてこの人をひき立てて、推し量りに入りたまふ。
39.36 夕霧、花散里へ弁明
 六条の院にぞおはして、やすらひたまふ。東の上、
39.37 雲居雁、嫉妬に荒れ狂う
 日たけて、殿には渡りたまへり。入りたまふより、若君たち、すぎすぎうつくしげにて、まつはれ遊びたまふ。
39.38 雲居雁、夕霧と和歌を詠み交す
 昨日今日つゆも参らざりけるもの、いささか参りなどしておはす。
39.39 塗籠の落葉宮を口説く
 かしこには、なほさし籠もりたまへるを、人びと、
39.40 夕霧、塗籠に入って行く
 「さりとて、かくのみやは。人の聞き漏らさむこともことわり」と、はしたなう、ここの人目もおぼえたまへば、
39.41 夕霧と落葉宮、遂に契りを結ぶ
 /かうのみ痴れがましうて出で入らむもあやしければ、今日は泊りて、
39.42 雲居雁、実家へ帰る
 かくせめても見馴れ顔に作りたまふほど、三条殿、
39.43 夕霧、雲居雁の実家へ行く
 寝殿になむおはするとて、例の渡りたまふ方は、御達のみさぶらふ。
39.44 蔵人少将、落葉宮邸へ使者
 大臣、かかることを聞きたまひて、人笑はれなるやうに思し嘆く。
39.45 藤典侍、雲居雁を慰める
 いとどしく心よからぬ御けしき、あくがれ惑ひたまふほど、大殿の君は、

夕霧 登場人物

  • 光る源氏  ひかるげんじ 五十歳   ····· (呼称)六条の院・院、
  • 朱雀院  すざくいん 源氏の兄   ····· (呼称)山の帝・院、
  • 女三の宮  おんなさんのみや 源氏の正妻   ····· (呼称)入道の姫宮・宮、
  • 夕霧  ゆうぎり 源氏の長男   ····· (呼称)大将の君・大将・男君・君、
  • 雲居雁  くもいのかり 夕霧大将の北の方   ····· (呼称)北の方・三条殿・三条の姫君・三条の君・大殿の君・女君・母君・上、
  • 落葉宮  おちばのみや 朱雀院の女二の宮   ····· (呼称)条の宮・宮・女、
  • 一条御息所 いちじょうのみやすどころ 落葉宮の母   ····· (呼称)御息所・上・故御息所・故上・亡き人、朱雀院更衣、

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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源氏物語  横笛 あらすじ 章立て 登場人物

公開日2023年7月29日