柏木 あらすじ
源氏 48歳 准太上天皇
柏木の病は回復の兆しはなく、病に伏しながらも、女三の宮に文を出す。宮は思い出すのも嫌な出来事なので、返事を書く気はないのだが、小侍従に促されていやいやながら書いたのを小侍従が届ける。
女三の宮は妊娠し、男子を出産する。薫である。
女三の宮は出家したいと思う。
ある夜、密かに、朱雀院は女三の宮が心配で、宮を訪問する。三の宮は、院に出家を願いでる。源氏は反対するが、院は許可し、僧を呼び、その場で剃髪し出家させる。急きょそうさせたのは、宮にとりついた六条御息所の死霊のしわざであった。
物の怪は、紫の上にとりつき、女三宮にも憑りついたのである。
柏木は見舞いに来た親友の夕霧にそれとなく事情をほのめかし、落葉の宮に対する配慮を頼み、遺言めいたことを残して、亡くなる。
夕霧は柏木の遺託を口実に、しばしば弔問に一条の宮を訪れる。落葉の君が目当てであるが、一条邸には、
母御息所と落葉の宮が住んでいる。落葉の宮の地味な存在に夕霧は惹かれるようになる。
巻名の由来
柏木亡き後、友として遺言めいた言葉もあり、夕霧は一条邸を尋ねる。そこで柏木の北の方の落葉の君に誘いの歌。
ことならば馴らしの枝にならさなむ葉守の神の許しありきと (夕霧)(36.24)
歌意 できるなら連理の枝になりたいものです 葉守の神のゆるしがありましたということで
柏木に葉守の神はまさずとも人ならすべき宿の梢か (落葉の君) (36.24)
歌意 主人となる葉守の神は居ないのに人を泊めていいものでしょうか
柏木 章立て
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- 36.1 柏木、病気のまま新年となる
- 衛門督の君、かくのみ悩みわたりたまふこと、なほおこたらで、年も返りぬ。
- 36.2 柏木、女三の宮へ手紙
- 「などかく、ほどもなくしなしつる身ならむ」と、かきくらし思ひ乱れて、枕も浮きぬばかり、・・・。
- 36.3 柏木、侍従を招いて語る
- 大臣、かしこき行なひ人、葛城山より請じ出でたる、待ち受けたまひて、加持参らせむとしたまふ。
- 36.4 女三の宮の返歌を見る
- 宮もものをのみ恥づかしうつつましと思したるさまを語る。
- 36.5 女三の宮、男子を出産
- 宮は、この暮れつ方より悩ましうしたまひけるを、その御けしきと、見たてまつり知りたる人びと、騷ぎみちて、・・・。
- 36.6 女三の宮、出家を決意
- 宮は、さばかりひはづなる御さまにて、いとむくつけう、ならはぬことの恐ろしう思されけるに、御湯などもきこしめさず、・・・。
- 36.7 朱雀院、夜闇に六条院へ参上
- 山の帝は、めづらしき御こと平かなりと聞こし召して、あはれにゆかしう思ほすに、・・・。
- 36.8 朱雀院、女三の宮の希望を入れる
- 「かたはらいたき御座なれども」 りけり。
- 36.9 源氏、女三の宮の出家に狼狽
- 御心の内、限りなううしろやすく譲りおきし御ことを、受けとりたまひて、さしも心ざし深からず、・・・。
- 36.10 朱雀院、夜明け方に山へ帰る
- 帰り入らむに、道も昼ははしたなかるべしと急がせたまひて、御祈りにさぶらふ中に、・・・。
- 36.11 柏木、権大納言となる
- かの衛門督は、かかる御事を聞きたまふに、いとど消え入るやうにしたまひて、むげに頼む方少なうなりたまひにたり。
- 36.12 夕霧、柏木を見舞う
- 大将の君、常にいと深う思ひ嘆き、訪らひきこえたまふ。
- 36.13 柏木、夕霧に遺言
- 「久しう患ひたまへるほどよりは、ことにいたうもそこなはれたまはざりけり。
- 36.14 柏木、泡の消えるように死去
- 女御をばさらにも聞こえず、この大将の御方などもいみじう嘆きたまふ。
- 36.15 若君の五十日の祝い
- 弥生になれば、空のけしきもものうららかにて、この君、五十日いかのほどになりたまひて、いと白ううつくしう、・・・。
- 36.17 源氏、老後の感懐
- 御乳母たちは、やむごとなく、めやすき限りあまたさぶらふ。
- 36.18 源氏、女三の宮に嫌味を言う
- 「このことの心知れる人、女房の中にもあらむかし。知らぬこそ、ねたけれ。烏滸おこなりと見るらむ」と、安からず思せど、・・・。
- 36.19 夕霧、事の真相に関心
- 大将の君は、かの心に余りて、ほのめかし出でたりしを、
「いかなることにかありけむ。
- 36.20 夕霧、一条宮邸を訪問
- 一条の宮には、まして、おぼつかなうて別れたまひにし恨みさへ添ひて、日ごろ経るままに、・・・。
- 36.21 母御息所の嘆き
- 御息所も鼻声になりたまひて、
「あはれなることは、その常なき世のさがにこそは。
- 36.22 夕霧、御息所と和歌を詠み交わす
- 大将も、とみにえためらひたまはず。
- 36.23 夕霧、太政大臣邸を訪問
- 致仕の大殿に、やがて参りたまへれば、君たちあまたものしたまひけり。
- 36.24 四月、夕霧の一条宮邸を訪問
- かの一条の宮にも、常に訪らひきこえたまふ。卯月ばかりの卯の花は、そこはかとなう心地よげに、・・・。
- 36.25 夕霧、御息所と対話
- 御息所ゐざり出でたまふけはひすれば、やをらゐ直りたまひぬ。
柏木 登場人物
- 光る源氏 ひかるげんじ 四十八歳 ····· (呼称)六条院・主人の院・院・大殿・大殿の君、
- 朱雀院 すざくいん 源氏の兄 ····· (呼称)院・山の帝、
- 女三の宮 おんなさんのみや 源氏の正妻 ····· (呼称)宮・二品の宮・尼宮・女宮・女、
- 薫 かおる 柏木と女三の宮の密通の子 ····· (呼称)男君・若君・君、
- 柏木 かしわぎ 太政大臣の長男 ····· (呼称)衛門督の君・衛門督・故殿、
- 夕霧 ゆうぎり 光る源氏の長男 ····· (呼称)大将の君・大将・大将殿・殿・君、
- 雲井雁 くもいのかり 夕霧の北の方 ····· (呼称)大将殿の北の方・大将の御方・女君、
- 致仕の大臣 ちじのおとど 柏木の父 ····· (呼称)致仕の大臣・父大臣・大臣、
- 四の君 しのきみ 柏木の母 ····· (呼称)北の方・母北の方・母上・上、柏木の母
- 紫の上 むらさきのうえ 源氏の妻 ····· (呼称)二条の上、
- 今上帝 きんじょうてい ····· (呼称)内裏・主上・朝廷
- 落葉宮 おちばのみや 朱雀院の第二内親王 ····· (呼称)女宮・宮、
- 一条御息所 いちじょうのみやすんどころ 落葉の宮の母 ····· (呼称)母御息所・御息所、
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
公開日2023年7月18日