若紫 あらすじ
源氏 18歳 参議兼近衛中将
源氏は、瘧病をわずらい、霊験あるとされる聖のいる北山に行く。そこで、ある僧都の庵室にやはり病気治癒で身を寄せていた尼君の一行を見つける。そこに十歳くらいの孫娘がいた。幼い遊び仲間がやったらしく、
雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを
(いぬきが雀の子を逃がしてしまった。伏籠のなかに入れていたのに)
といって少女は泣いていた。源氏は一目見てその少女の美しさを見出す。少女は源氏が慕っていた藤壺にとてもよく似ていた。その少女は藤壺の姪に当たり、尼君の亡くなった娘の処に兵部卿の宮(藤壺の兄)が通っていたときの子であった。源氏は少女の世話をしたいと尼君に申し出るが、まだ幼すぎるとして、断られる。
一方、源氏は恋いこがれている藤壺が里帰りした時、王命婦の手引きで藤壺と夢のような契りを交わし、藤壺は懐妊する。
京の邸宅に戻った後、尼君はまもなく亡くなった。しかし、死に際に、尼君は少女の後見を源氏に託した。少女は、父の兵部卿の宮邸に引き取られることになっていた。その前日源氏は少女を乳母の少納言と共に、二条院の自邸に強引に連れ去るのだった。
巻名の由来
源氏は、北山のある僧都の草庵で、美しい女子を発見した。
手に摘みていつしかも見む紫の根にかよひける野辺の若草 (源氏)(5.11)
歌意 この手に摘んで早く見てみたい、藤壺の紫にゆかりの野辺の少女を
若紫 章立て
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- 5.1 三月晦日、加持祈祷のため、北山に出向く
- 瘧病にわづらひたまひて、よろづにまじなひ加持など参らせたまへど、しるしなくて、あまたたびおこりたまひければ、・・・。
- 5. 2 山の景色や地方の話に気を紛らす
- すこし立ち出でつつ見渡したまへば、高き所にて、ここかしこ、僧坊どもあらはに見おろさるる、ただこのつづら折の下に、・・・。
- 5. 3 源氏、若紫の君を発見す
- 人なくて、つれづれなれば、夕暮のいたう霞みたるに紛れて、かの小柴垣のほどに立ち出でたまふ。
- 5. 4 若紫の君の素性を聞く
- あはれなる人を見つるかな。
- 5. 5 翌日、迎えの人々と共に帰京
- 明けゆく空は、いといたう霞みて、山の鳥どもそこはかとなうさへづりあひたり。
- 5. 6 内裏と左大臣邸に参る
- 君は、まづ内裏に参りたまひて、日ごろの御物語など聞こえたまふ。
- 5. 7 北山へ手紙を贈る
- またの日、御文たてまつれたまへり。
- 5. 8 夏四月の短夜の密通事件
- 藤壺の宮、悩みたまふことありて、まかでたまへり。
- 5. 9 妊娠三月となる
- 宮も、なほいと心憂き身なりけりと、思し嘆くに、悩ましさもまさりたまひて、とく参りたまふべき御使、しきれど、思しも立たず。
- 5.10 初秋七月に藤壺宮中に戻る
- 七月になりてぞ参りたまひける。
- 5.11 紫の君、六条京極の邸に戻る
- かの山寺の人は、よろしくなりて出でたまひにけり。
- 5.12 尼君死去し寂寥と孤独の日々
- 十月に朱雀院の行幸あるべし。
- 5.13 源氏、紫の君を盗み取る
- 君は大殿におはしけるに、例の、女君とみにも対面したまはず。
若紫 登場人物
- 光る源氏 ひかるげんじ 十八歳 参議兼近衛中将 ····· (呼称)君・源氏の中将・光る源氏・源氏の君・中将の君・男君。
- 藤壺の宮 ふじつぼのみや 父桐壺帝の妃、光る源氏の継母 ····· (呼称)宮・女宮。
- 紫の上 むらさきのうえ 十歳ほど 兵部卿宮の娘、藤壺宮の姪 ····· (呼称)若草・若君・初草・君。
- 尼君 あまぎみ 紫の上の祖母 ····· (呼称)尼・北の方・祖母上・故尼君。
- 僧都 そうず 紫の上の祖母の兄 ····· (呼称)なにがし僧都・僧都。
- 王命婦 おうみょうぶ 藤壺宮の女房 ····· (呼称)命婦の君・命婦。
- 左大臣 さだいじん 源氏の岳父 ····· (呼称)大殿・大臣。
- 葵の上 あおいのうえ 源氏の正妻 ····· (呼称)女君。
- 頭中将 とうのちゅうじょう 葵の上の兄---(呼称)頭中将。
- 兵部卿宮 ひょうぶきょうのみや 紫の上の父 ····· (呼称)親王・宮・父宮。
- 惟光 これみつ 源氏の乳母子 ····· (呼称)惟光・大夫。
- 良清 よしきよ ····· (呼称)播磨守の子
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。章分け、登場人物等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
公開日2017年4月29日/改定2023年1月27日