向田邦子の手料理
おしまいに、この頃、私がよく作るお手軽な卵料理をご披露しましょう。
卵をひとりあて一個茹でて、糸で輪切りにして一人分の小鉢にならべる。
そこへ、熱くした濃いカレー・ソースをかけるだけなのだが、、カレーは「デリー」のがおいしい。「デリー」は、カレー粉を全く使わず、さまざまなスパイスだけで味をだした本格的なカレーで、私はデパートの売場でこれをみつけ、たまたまアフリカのインド人の店で、本式のカレーを食べて帰った直後なのですっかり気に入ってしまい、よく利用している。中に何も実が入っていないカレー・ソースだけを、インド、チキン、など各種の味に分けてパックで売っている。私はインド、という味が好きで、この横着卵も、「デリー」のカレーを食べて思いついた代物である。これも一個の卵で、オードブルなら二人前は大丈夫である。物のない時に育ったせいか、よくよく人間が始末に出来ているのである。
『麻布の卵』(『夜中の薔薇』向田邦子 (株)講談社 1981年10月 )
私は料理は下手なのであるが、朝昼は自分で作っているので、向田邦子の手料理を真似したいと思って、これを引用した。「デリー」のカレーはインターネットで調べて注文した。カシミールカレー(スパイスが利いて辛口)、インドカレー、デリーカレーなどの種類があった。とりあえず入門編として、デリーカレーを注文した。機会を作ってお店に行ってみたい。銀座店が新橋から近い。私が時々行く東急ブラザ銀座の近くである。神奈川には溝の口と藤が丘に店があるようだが、どの程度本店の伝統が継がれているかわからない。 管理人