向田邦子とバドワイザー
それにしても、宇宙の未来について思いわずらうかたもおいでになるというのに、たかだかビールの大中小について懊悩するとは、何たる小者であろう。こんなことでは、とても大きいものは書けそうもない。
決然として酒屋に電話をして、バドワイザーのカンを二ダース注文した。カンなら大も中も小もない。明日から、瑣末なことに心をわずらわすことなく仕事に打ち込もう。
『小者の証明 酒中日記 2』(『夜中の薔薇』向田邦子 (株)講談社 1981年10月 )
誰かのブロッグあるいは本だったか、向田家の墓地を訪れた方があって、いつもバドワイザーの缶が備えてあるとコメントがあった。バドワーザーはどこにでてくるのかなと思っていたら、ここに出てきたので、引用した。全文のせられないが、とても面白い肩の凝らないエッセイだ。 管理人