世の中、ついでに生きている
最終目的は「世の中、ついでに生きている」というような、たかが噺家というとこね、そう思うところに早く行きたいわけですよ。
噺家は落ち込んでいる時、父・五代目志ん生に「出世したって噺家だし、落ちぶれたって噺家」なんだから気にすることはないと言われたという。「ついでに生きている」とはその父の口癖。何の「ついで」かは不明だが、芸に人生を懸けるなどと考えず、つねに自分を隔てておけということか。志ん朝『世の中ついでに生きてたい』
折々のことば 鷲田 清一 朝日新聞 2022年5月12日