様々な思想


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憲法九条と後ろめたさ

結局、中国に関して日本は傍観者でいいのではないかと思います。大陸問題に口を出さない。そのかわり、自分の利害というのをはっきり見る必要がある。変な親中国も変な反中国も要らない。安易な友好政策というのは、日本にとって意味がないかもしれません。敵対する必要はないけれど、何も日中友好が一番であるとか、わざわざいう必要はありません。つかず離れずでいいのでrはないかと思うのです。
ただし中国の言っていることに正当性がないということと、こちらが潔白であるかどうかは別の話です。人間がよく陥るのは、自分が正しくないといられないという過ちです。要するに自分が負い目を感じていたくない。自分が潔白でありたいというのが、結構日本人に根強い感覚です。
初めから人間は罪を背負っているものである、気がついていなくても何らかの罪を背負っている、ということを意識していない。腹に一物もないということは、いいことだと思っている人が多い。そういう後ろめたさのない政治家は怖い。
その後ろめたさとずっと暮らしていく、つき合っていくというのが大人なのです。私が憲法九条改正に反対する理由もそれです。九条はそのままにしておいていい。そうしておけば、軍隊を動かすのは何となく後ろめたいから、いろいろと論争が起こるでしょう。それでいいと思っています。
後ろめたさもなく軍隊を動かされてたまるかと思うのです。「これは実は悪いことをしているんだよ」という気持ちがあって、はじめてああいうものが許される。正々堂々と人殺しをしていいと思われたら困る。
別に「日本の理想は無抵抗主義だ」と言っているわけではありません。状況によっては、実際に自衛隊を動かす局面があっても、それは仕方ありません。現実には対応しなくてはいけない。ただし、国家が人を殺す、戦争を起こすことが、日本以外の国では中国だろうがアメリカだろうが、基本的には認められている。それは本当はまずいことなのだということだけは、戦争の被害者だからよくわかっています。

『超バカの壁』養老猛司著 新潮新書

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公開日2022年1月28日