お彼岸

水ぬるみ
陽も暖かく

この墓苑の一隅の桜はまだ花をつけず
向かいの岡のひともとの木蓮が
白い花をいっぱいに咲かせています

お墓をきれいにして
たくさんのバラの花を立てて
その前にたたずんでいる

順ちゃん
お母さん
わたしのなかでは
あなたがたは生きていますが
その思い出はだんだん遠くなります

この世を去ってから
あなたがたはどこにいるのか

お経を読んでさがし
聖書を読んでさがしたが
どちらも人びとの過剰な期待が生んだ幻想だと思った

人の記憶が消えれば
あなたがたも消えて土に還るということか

平成三十一年三月
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