まるでそこに世界の謎があるかのように

横浜駅西口の
ダイヤモンド地下街の雑踏のなかを歩いていると
エレベーターから男の子がおりてきた

体全体をくねらせて
自由にならない両足を
必死に 両手の杖でささえて
人ごみのなかを歩いて行った

せめて他人ひとと同じように歩けたら
少年はなんどもなんども
自問したに違いない

まるでそこに世界の謎があるかのように
わたしは立ちすくんで見ていた

少年よ
君は古今東西の哲学を以ってしても
解決できない悩みを
悩んできたのだ

平成二十九年十月
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