幸福だった
幸江さんと会えて
どんなに幸福なことだったか
子供たちをさずかって
どんなに恵まれた家庭だったか
その場その場を生きることに精一杯で
自分をつつんでいた幸福を感受できなかった
世に真実はあると思っていた
それを見つければ
人生の解を得るに等しいと考えていた
幸江さんがこの世を去り
子供たちもいなくなり
わたしの幸福は消え
ひとり老いて思う
たとえ 真実を得たとしても
存在の寂しさがなくなることはないだろう
突如 世の終わりが到来し
世界全体が新しくなることもないだろう
平成二十七年九月 / 更新平成二十八年六月