誰にも会わない

夕ぐれ
ひどく落ち込んで帰る
薄日のように
悲しみもさしてくる

何を考えるでもなく
電車のなかでじっとしている
乗り換えて
バスのなかでじっとしている

家に着いて
ポンズを散歩に連れ出す
十二月の雨上がりの暖かい夜だ

林の方に
どんどん歩いてゆく
側歩を教えているのだが
ぜんぜん言うことをきかない
うしろに回って
尻の辺りを前足でつついたりして
また歩いてゆく

木々は黒々とうずくまっている
和泉川の鴨はいまどうしているのだろう
散歩に行き交う人も犬も
誰にも会わない

二00六年十二月記
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