以上のような点で素粒子は粒子に似ているが、ここに著しく粒子と異なった点がある。素粒子についてその位置を定めることも 出来、あるいはその運動量を定めることも出来るにかかわらず、一つの素粒子についてその位置がこれこれであり、 かつ（・・ ） 運動量がこれこれである、ということは出来ない。すなわち、素粒子とは、粒子と異なって、空間のどこそこにあるという文章と、 運動量が何らかの値をもっているという文章とを、かつ（・・ ）、 という言葉で結びつけたような文章の主語になれるような代物（・・ ）では ないのである。簡単にいえば、素粒子とは位置と運動量を同時にもつことの出来ない 代物（・・ ）である。前に素粒子は色をもつことが出来ない、 したがって素粒子は、その色がこれこれであるという文章の主語にはなれないといったが、ここでは事情が少し複雑になる。なぜなら、 素粒子とは、その位置がこれこれであるという文の主語にはなれるし、またその運動量がこれこれであるという文の 主語にもなり得うるが、この二つの文をかつ（・・ ）ということばで結合 させた文の頭にはこられないようなものである、というのである。