素粒子は粒子であるか
2 素粒子は一つ二つと数えることが出来る
まず素粒子は一つ二つと数えることが出来るという点で、通常の粒子に似ている。実際にわれわれは、素粒子を一つ二つと
数える方法をもっている。例えばテレビジョンに用いる蛍光板のような装置は、それに電子がぶつかると光を発する性質をもっている。
そこで、この蛍光板に非常に希薄な電子の流れをあてると、板のあちこちの点がポツリポツリと光る。この発光はちょうどその瞬間に
その場所に電子がやってきたことを示す。であるからこの実験で蛍光板にあたった電子は一つ二つと数えることが出来る。こうして
数を数えることが出来るということ、これは電子が通常の粒子と似ている第一の点である。
次に光を考えてみよう。光は通常波動であると考えられている。しかし光も電子と類似してその数を一つ二つと
数えることが出来るという性質がある。光がこの性質をもっているということは前世紀の物理学者の全く知らなかった
ところであって、今世紀の大きな発見である。金属の表面に光(紫外線やX線)をあてると、そこから電子が飛び出すという現象は、
前世紀から知られていた。ところが、この時に飛び出る電子について、次のようなことが発見された。充分に弱い(希薄な)光線を
金属面にあてると、この面のあちこちの点からポツリポツリと電子が飛び出す。このとき単色光を用いて実験を行ってみると、
飛び出る電子の運動エネルギーは、光の強さには関係しない。従ってどんな希薄な光線を用いても、このエネルギーが小さくなる
ということはなくて、そのエネルギーの大きさは、光の色によって定まる一定の値をもっている。このことは光のエネルギーが
その色によって定まる一定のかたまり として電子に
ぶつかることを意味する。例えば、赤い色の場合には、そのエネルギーは、
0.0000000000026エルグ
であり、紫色の場合には、
0.0000000000052エルグ
である。この実験で、飛び出した電子を数えることによってその光のエネルギーの
かたまり を一つ二つと数えることが出来る。
もし、光の干渉とか、回折とかいう実験を知らない人が、この実験だけを行ったとすれば、その人にとって、光とはエネルギーの
かたまりの流れであるとしか考えられないであろう。現代の物理学者の考えでは、光線も電子と同様に粒子に似た性質をもった、
ある素粒子の流れであると考えられている。この粒子をわれわれは光子(または光量子)と名付ける。結論として
光子は一つ二つと数え得るという点で、通常の粒子と似た性質をもっている。
他の素粒子、例えば陽子とか中性子とか、あるいは中間子とかにおいても全く事情は同じである。これらの素粒子は一つ
二つとその数を数えることが出来るという点で、粒子と似た性質をもっている。
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