第三章 賭の必要性について
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私の一生の短い期間が、その前と後との永遠のなかに<一日で過ぎて行く客の思い出
(1)>のように呑み込まれ、私の占めているところばかりか、
私の見るかぎりのところでも小さなこの空間が、私の知らない、そして私を知らない無限に広い空間のなかに
沈められているのを考えめぐらすと、私があそこでなくてここにいることに恐れと驚きとを感じる。
なぜなら、あそこでなくてここ、あの時でなくて現在の時に、なぜいなくてはならないのかという理由は
全くないからである。だれが私をこの点に置いたのだろう。だれの命令とだれの処置とによって、
この所とこの時とが私にあてがわれたのだろう。
(1)旧約外典『ソロモンの知恵』5の15.
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