英語の学習 convinceの便利な使い方
convinceの便利な使い方
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動詞の convince (確信させる、納得させる、信じさせる)は、なかなか便利な英語であり、映画『ユージュアル・サスペクツ』
のセリフには、その使い方を教えてくれる例がたくさんある。たとえば、関税局の審査官が尋問中にこう言う。
Convince me ─ tell me every last detail. (俺が納得するまで、
一つ残らずすべて詳しく話せ。)
この"Convince me" という言い回しは、実に英語らしく、簡潔で迫力がある。『カサブランカ』でも、まったく
同じ使い方で、
She did her best to convince me that she was still in love with me...
(彼女は、まだ僕を愛していると、一所懸命に説得した。)
というリックのセリフがある。
自分はまるめこめない
また"convence oneself"という表現もいかにも英語らしい感じがする。たとえば『カサブランカ』では、ナチスと戦う気はない
と言い張るリックが、ラズロにこう言われる。
You know how you sound,...? Like a man who's trying to convince himself of something he doesn't believe in his heart.
(あなたの言っていることがどんな印象を与えているか分かりますか? 心の中では信じていないことを信じるよう、
無理して自分を納得させようとしている感じですね。)
『ユージュアル・サスペクツ』では、せっかく足を洗って世間にはまともなビジネスマンとして通るようになった主人公が、
ついまた「犯罪生活」に戻ったことについて、詐欺師のヴァーバルがこう解説する。
...a man can't change what he is. He can convince anyone he's
someone else, but never himself. (人間は、自分の本体を変えることはできないものだ。別人になったと人にはうまく
信じさせても、自分にだけは信じさせることができないんだ。)
この会話の続きで、犯罪の秘密組織の「伝説的な領袖」、大悪党のカイザー・ソゼの不思議な力についてもヴァーバルはこう
説明する。「ソゼがいったい何者なのかは、結局誰にもよく分からない。実在さえ確信できず、疑う人も多い。それこそ彼の力だ」
などと言い、この現象を、魔王サタンの「作戦」にふまえてこうたとえる。
The greatest trick the Devil ever pulled was convincing
the world he didn't exist. (サタンのもっとも成功している策略は、世の中に、自分が実在しないと信じさせていることだった。)
また、誰かに信じさせられたのではなく、自分勝手に何かを信じ込んでいる、思い込んでいる 場合、形容詞としての convinced 、
つまり" to be onvinced (that 〜/of 〜)" もよく使われる。たとえば、
He is convinced that his singing voice is a lot like Elvis's.
(彼は自分の歌声が結構エルビスに似ていると思い込んでいる。)
あるいは、
He is convinced that his wife will come back to him. (彼は、別れた妻が
きっと戻ってくれると信じ込んでいる。)
や、逆のケース、
She is unconvinced of the wisdom of going back to her husband. (夫の所
に戻るのが賢明だと彼女には思えない。)
といった表現である。
to be convinced ( of something )は、to believe ( something )(=[何かを]信じる)より強い表現である。場合によっては、
「信じ込む」と同様に、客観的な観点からすると、信じられていることは「果たして真実だかどうか」、もしくは「とんでもない」
といったニュアンスがある。だから、たとえば「彼は、彼女が二人の友情を絶対に裏切らないと信じている」ことを、
He believes she would never betray his friendship.
と表現すると「彼女に対する彼の信頼は間違っていないかもしれない」という可能性を幾分か認めている
印象を与えるのに対して、
He's convined she would never betray their friendship.
と表現すると、むしろ、「彼の見方はちょっと甘いだろう」というニュアンスになるのである。
映画『ユージュアル・サスペクツ』の台本はなかなか巧みにできており、観客は、ほとんど最後まで、ある基本的な嘘が
本当だと思いこまされてしまう。この場合、英語では、
For most of the film, the audience is convinced of the truth
of a certain basic lie.
という表現がピッタリ合う。
(「4 意志貫徹の会話術 1 隠された「つもり」」か ら)
『心にとどく英語』(岩波新書)マーク・ピーターセン著