源氏物語  あらすじ 簡易版

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1 桐壺

(源氏1~12才)〇

桐壷帝きりつぼてい寵愛ちょうあいされた更衣こうい(桐壷更衣)は、美しい第二皇子光源氏を産んで死んでしまう。帝は、第一皇子(後の朱雀帝)が春宮(皇太子)に立たれるに際し、光源氏を高麗こま相人そうにんの占いに従って臣籍にお下しになった。元服した源氏は、葵上あおいのうえ(左大臣の娘5~16)と結婚するが、亡き母に代わって入内した藤壺ふじつぼ宮を思慕するようになった。

2 帚木

(源氏17才)〇

五月雨さみだれの降り続くある夜、源氏は頭中将とうのちゅうじょう(葵上の兄)らから経験談や女性論を聞く「雨夜の品定め」。その翌日、源氏は方違かたたがえにかこつけて中川の紀伊守きのかみ邸を訪れ、その後、紀伊守の父伊予之介いよのすけの後妻空蝉うつせみちぎった。

3 空蝉

(源氏17才)〇

源氏は空蝉の弟小君こぎみの案内で、紀伊守邸を訪れ、空蝉が継娘軒端荻ままむすめのきばのおぎを打っている様を垣間かいま見る。その夜、空蝉の部屋に忍び込むが、空蝉は源氏との再会を拒んだ。

4 夕顔

(源氏17才)〇

源氏は重病の大弐乳母だいにのめのとを五条の家に見舞い、惟光これみつ(乳母の子)のはからいで隣家の夕顔ゆうがお(19)を知り始めるが、やがて夕顔は、源氏が連れ出した近くの荒廃した某院なにがしのいんで、ものにとりつかれて死んでしまう。夕顔には頭中将との間に女の子(玉鬘たまかずら)がいた。

5 若紫

(源氏18才)〇

源氏は、「わらは病み」の加持のため北山の聖を訪ねた折り、近くの小さな庵室で美しい少女紫上(藤壺の姪、10)を見出した。北山から帰京した源氏は、三条宮に里下りしていた藤壺(23)に会い、夢のような契りを交わす。藤壺は源氏の子(後の冷泉帝)を宿し、二人は罪の深さにおののく。その年の秋、紫上の祖母が亡くなり、兵部卿宮(紫上の父)が紫上を引き取ろうとしていることを知り、急いで二条院へ迎えた。 

6 末摘花

(源氏18~19才)〇

夕顔に代わる人を探していた源氏は、常陸宮の姫君末摘花を知る。源氏は姫君の鼻が赤く長く垂れているのに驚くが、姫君の面倒を見ようと決心する。

7 紅葉賀

(源氏18~19才)〇

桐壷帝の朱雀院院への行幸に先立ち試楽が催され、源氏は頭中将を相手に青海波を舞う。翌年、藤壺は皇子(後の冷泉帝)を産む。藤壺は中宮に、源氏は参議に昇進する。

8 花宴

(源氏20才)〇

翌年、南殿なでん紫宸殿ししんでん)で花の宴が催され、源氏は春鶯囀しゅんのうでんを舞った。その夜、弘徽殿こきでんの細殿で美しい女性に出会い、一夜を過ごす。のち源氏は、彼女が春宮とうぐう(朱雀帝)に入内する予定の朧月夜君(弘徽殿女御の妹)であることを知った。

9 葵

(源氏22~23才)〇

桐壷きりつぼ帝が譲位し朱雀すざく帝が即位した。賀茂かも御禊ごけいの日、行列見物に来ていた葵上(26)と六条御息所みやすんどころ(29~30)が、車をとめる場所のことで争い、御息所の車は葵上の下部しもべからひどいはずかしめを受けた〔車争い〕。葵上は御息所の生霊いきりょうに苦しめられ、男の子を産んで急死した。葵上の忌みが明けて源氏は紫上と結婚した。

10 賢木

(源氏23~25才)〇

六条御息所は、源氏への愛情を絶とうとして、娘の斎宮さいぐうとともに伊勢へ下ることを決意する。一方、桐壷院が崩御され、権勢は反源氏の右大臣方に移る。藤壺(28~30)は出家し、右大臣方は源氏を失脚させようと策略をめぐらす。

11 花散里

(源氏25才)〇

夏、故桐壷院の麗景殿女御れいけいでんのにょうごを訪れた源氏は、その妹花散里はなちるさとちぎった。この人は温和な人であった。

12 須磨

(源氏26~27才)〇

時勢が変わり、自分の側の情勢が不利であることを察して、源氏はわずかなお供を連れて須磨すまに下った。右大臣方をはばかって、須磨を訪れる人はなく、源氏にとっては、都の人々と便りを交わすことだけが慰みであった。 

13 明石

(源氏27~28才)〇

大暴風雨に襲われた夜、亡き父帝が夢にあらわれ、そのお告げで源氏は明石へ移った。その後、明石入道の娘明石上あかしのうえ(18~19)を知り、結ばれる。一方、朱雀すざく帝の一族にも相次いで不幸が起こり、帝はこれを源氏を苦しめた報いと考え、源氏召還の宣旨せんじを下された。源氏は懐妊中の明石上を残して帰京した。

14 澪標

(源氏28~29才)〇

  源氏の帰京後、朱雀帝は譲位され、冷泉帝れいぜい(源氏と藤壺との間の子 10~11)が即位された。源氏一門に再び春がめぐってきた。源氏と離れて住む明石の上は女の子(明石姫君)を産む。六条御息所みやすんどころ(35~36)は娘の前斎宮ぜんさいぐう秋好あきこのむ中宮)とともに伊勢から帰京したが、重い病にかかり、源氏に娘の将来を頼んで世を去る。源氏は前斎宮を養女とした。

15 蓬生

(源氏28~29才)〇

源氏が須磨・明石に退去していた間、末摘花すえつむはなは困窮の日々を送るが、やがて源氏に引き取られて、幸せを得る。

16 関屋

(源氏29才)〇

源氏は石山詣いしやまもうでの途中、逢坂山おうさかやまで、かって苦しい恋に悩んだ空蝉うつせみが、任期満ちて上京する夫常陸介ひたちのすけに伴われて上京するのに出会って、感慨無料となる。その後、夫は老病で亡くなり、世をはかなんで空蝉は出家する。

17 絵合

(源氏31才)〇

六条御息所の娘(秋好中宮、22)が源氏のはからいで入内じゅだい梅壺うめつぼに入り、冷泉帝の女御となった。冷泉帝は絵を好み、梅壺方と弘徽殿こきでん方の間で絵合わせが行われ梅壺方が勝った。

18 松風

(源氏31才)〇

二条院の東院が造営され、源氏は明石上(22)とその姫君明石姫君(3)に上京を勧める。明石姫君を二条院に引き取りたいという源氏の意向に、紫上(23)は快く同意した。

19 薄雲

(源氏31~32才)〇

冬の寒い日、明石姫君は二条院に引き取られたが、紫上に可愛がられていると聞き、明石上は安心した。太政だじょう大臣(葵上の父)が死に、出家した藤壺(36~37)も亡くなり、源氏は深く悲しんだ。ある夜、冷泉帝は夜居よいの僧から、実父は源氏であるという秘密を知らされ非常に驚き、源氏に帝位を譲ろうとしたが、源氏は固辞した。

20 朝顔

(源氏32才)〇

紫上は源氏と朝顔の君との噂を聞いて煩悶した。ある雪の夜、源氏は昔や今の女性のことを紫上と語り合うが、源氏の夢に藤壺が現れ、そのことを恨んだ。

21 乙女

(源氏33~35才)〇

年が明けて、源氏は太上大臣となり、六条御息所の旧邸を修理して、六条院を造営する。六条院には四つの町があり、源氏と紫上は春、花散里は夏、秋好中宮は秋の景色を配した御殿に住み、少し後に、明石上が冬の景色の御殿に移り住んだ。

22 玉鬘

(源氏35才)〇

筑紫つくしへ下った夕顔の遺児玉鬘たまかずら(21、父は頭中将)は、大夫監の強引な求婚を避けて上京、初瀬詣での途中、椿市で夕顔のかっての侍女右近うこんに会い、やがて源氏に引き取られる。

23 初音

(源氏36才)〇

源氏は六条院で紫上と新春を祝う。玉鬘の上京も重なり、六条院は華やかになる。

24 胡蝶

(源氏36才)〇

玉鬘の美しさは評判となり、源氏の弟の蛍兵部卿宮は妻にと望み、内大臣の子柏木(20)は異母姉とも知らず思いを寄せる。っ源氏もその美しさに心を引かれていた。

25 蛍

(源氏36才)〇

源氏が多くの蛍を玉鬘の顔のあたりに放つと、ほたるひょうぶきょうのみやはその美しさに魅せられる。源氏は絵物語に熱中している玉鬘を相手に物語論を展開する。  

26 常夏

(源氏36才)〇

真夏のある日、源氏は玉鬘を訪ね、夕涼みを楽しむ。

27 篝火

(源氏36才)〇

秋、玉鬘に添い寝した夜、源氏は篝火で美しく映える玉鬘を見て心が激しく揺れる。

28 野分

(源氏36才)〇

野分の吹くころ、父源氏の見舞いに来た夕霧(15)は紫上を見て、その美しさに驚く。

29 行幸

(源氏36~37才)〇

源氏は玉鬘の将来を考え、内大臣(頭中将)に玉鬘の素性を打ち明けた。内大臣は成人した娘の姿を見て涙を落した。源氏は玉鬘を尚侍ないしのかみとして入内させようと思った。

30 藤袴

(源氏37才)〇

玉鬘は入内には気乗りがしなかった。夕霧は玉鬘に言い寄ったが、玉鬘は応じなかった。一方、玉鬘が最も嫌っていた髭黒大将が玉鬘に執心し、求婚の手紙を出した。

31 真木柱

(源氏37~38才)〇

髭黒大将は侍女の手引きで玉鬘を手に入れた。大将の北の方と娘は実家に帰った。

32 梅枝 

(源氏39才)〇

六条院では、明石姫君の裳着の式が行われ、春宮への入内の準備が進められた。

33 藤裏葉

(源氏39才)〇

夕霧(18)は長い間の恋が実って、雲居雁くもいのかり(20)と結婚することになった。同じ月、明石姫君が入内した。その時、紫上と明石君は初めて対面した。秋、源氏は太上だじょう天皇にじゅんぜられ、内大臣は太政大臣に、夕霧は中納言に昇進した。冷泉帝と朱雀院が源氏の六条院へ行幸されるなど、源氏一門の栄華は極まる。

34 若菜 上

(源氏39~41才)〇

朱雀院は、女三宮(13~15)の行く末を案じ、源氏に託して出家された。後見を望んでいた柏木(23~25)は失望した。源氏の四十の賀が催され、女三宮が六条院へ移られ、紫上は一人寝の夜が多くなった。柏木は六条院の蹴鞠けまりの会で女三宮を見て、恋に陥る。

35 若菜 下

(源氏41~47才)〇

柏木は女二宮(落葉宮おちばのみや)と結婚したが、女三宮のことが忘れられなかった。柏木と契った女三宮は懐妊する。これを源氏が知り、かっての藤壺との一件を回想し、宿命の恐ろしさにおののく。柏木は苦悶のために病床につく。

36 柏木

(源氏48才)〇

女三宮(22)は男の子(かおる)を産んで出家する。柏木(32)は見舞いに来た夕霧(27)に秘密を打ち明け、源氏の許しをい、落葉宮の行く末を頼んで死ぬ。源氏は、人間の宿命の恐ろしさを感じる。

37 横笛

(源氏49才)〇

源氏は柏木の一周忌を盛大に営んだ。夕霧は落葉宮(柏木の北の方)を慰めていたが、落葉宮の母から、柏木遺愛の横笛を贈られた。

38 鈴虫

(源氏50才)〇

夏、はすの花の咲くころ、女三宮の持仏供養を兼ねて出家披露が行われた。秋に、源氏は女三宮を訪ね、鈴虫の宴を開いた。

39 夕霧

(源氏50才)〇

夕霧は次第に落葉宮にひかれ、その仲を聞いた雲井雁(31)は怒って、父大臣のもとに帰ってしまう。

40 御法

(源氏51才)〇

紫上(43)は大病以来日ましに衰弱し、出家を願ったが源氏は許さなかった。紫上は二条院で法華経ほけきょう千部の供養を行った。八月一四日暁、源氏と明石中宮(明石姫君・23)に見守られながら静かに息を引き取った。源氏は悲嘆に暮れ、やがて出家の志を固めた。

41 幻

(源氏52才)〇

源氏は、紫上のありし日をしのびながら、出家を決意し た。「雲隠」の巻は巻名だけで本文はない。この間に源氏は出家し、世を去る。ここに源氏の物語は終わる。

42 匂宮

(薫14~20才)〇

源氏の没後、それに代わる人として、薫かおる(女三宮の若君)と匂宮におうのみや今上帝きんじょうていと明石中宮との間に生まれた三宮15~21)とが、すぐれた人としてうわさされていた。明るく社交的な匂宮に対し、薫は、出自を感知してか、まじめさの中にどことなく暗い影を宿していた。

43 紅梅

(薫24才)〇

蛍宮の死後、真木柱まきばしら髭黒ひげぐろの娘)は紅梅大納言(柏木の弟)と再婚する。大納言は先妻が産んだ中君なかのきみ(24)を匂宮に勧めるが、匂宮はまま姫君(真木柱の娘)に心を寄せていた。

44 竹河

(薫14~23才)〇

髭黒の没後、玉鬘かまかずら腹の大君おおいぎみ(16~25)は冷泉院にのぼり、中君は母に代わって今上帝の尚侍となった。蔵人少将(夕霧の子)は宰相となり、竹河左大臣の娘と結婚した。

45 橋姫

(薫20~22才)〇

薫は、源氏の異母弟八宮はちのみやを宇治の山荘に訪ねる。八宮は出家の志があることを話し、薫に二人の娘大君おおいぎみ(22~24)と中君なかのきみ(20~22)の行く末を頼んだ。その夜、薫はべん乳母めのとから、自分の出生の秘密ー自分が源氏の子ではないことーを知らされ、実父柏木の形見の手紙などを受け取り、空恐ろしさを覚える。

46 椎本

(薫23~24才)〇

八宮は娘たちの後事を託して死ぬ。薫は大君おおいぎみに恋し、匂宮は中君なかのきみを慕う。

47 総角

(薫24才)〇

八宮の一周忌の後、薫は大君との結婚を望むが実らず、大君(26)は心労が重なり死ぬ。

48 早蕨

(薫25才)〇

匂宮は中君を二条院に迎えた。春、花の盛りのころ、薫は二条院を訪れ、中君といろいろと思い出話にふけった。これを見て、匂宮は二人の仲を疑った。

49 宿木

(薫24~26才)〇

匂宮が六君(夕霧の娘)と結婚したため、中君は悲しむ。ある時、薫は中君から、大君に生き写しともいう、異母妹浮舟のことを聞いて、激しく心を動かされた。薫は宇治を訪れ、浮舟うきふね垣間かいま見て、心をときめかす。

50 東屋

(薫26才)〇

二条院の中君(26)のもとに預けられていた浮舟(21)は、匂宮(27)に迫られたため、急いで三条の小家に移された。薫は二人の愛を育てようとして、秋、時雨の降る夜、三条の家を訪れ、翌朝浮舟を車に乗せて宇治の山荘に移した。

51 浮舟

(薫27才)〇

匂宮は薫の留守をねらって宇治を訪れ、薫を装って浮舟に近づき、契りを結んだ。浮舟は薫と匂宮との二人の愛にはさまれて苦しみ、宇治川に身を投じる決意をした。

52 蜻蛉

(薫27才)〇

浮舟が失踪しっそうし、遺骸いがいのないまま葬儀を行った。薫も匂宮も悲嘆の涙にくれるが、多情な匂宮は、まもなく故式部卿の忘れ形見の姫君に思いを寄せていく

53 手習

(薫27~28才)〇

浮舟は生きていた。横川僧都よこかわのそうずの一行に助けられ、洛北の小野に移り、剃髪ていはつしてしまう。薫が浮舟の生存を知ったのは、浮舟が出家した後であった。

54 夢浮橋

(薫28才)〇

薫は横川僧都を訪ね、浮舟の生存を確かめた。浮舟に会わせてほしいと頼むが、僧都は仏罰を恐れて聞き入れない。薫は小君こぎみ(浮舟の弟)を遣いに出して浮舟に手紙をやり、下山を勧めたが、浮舟は小君にも会わず、手紙も受け取らなかった。小君が空しく帰京した。


※ このページは、『新訂国語図説』五訂版(株式会社京都書房 2020年1月21日五訂版第2刷発行)から、御了解を得て、そのまま転載させていたいただいております。源氏物語のあらすじとして、簡にして要を得ていると思ったからであります。

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公開日2020年11月26日