紅梅 あらすじ
薫 24歳 中納言
この巻は、突如、舞台が変わって、右大臣家の状況が語られる。
致仕の太政大臣家(旧頭中将)では、柏木亡きあと、次男の按察使大納言が跡を継いだ。紅梅大納言ともよばれる。紅梅と亡くなった北の方との間に、娘が二人いて、大君と中君と呼ばれていた。大君は東宮の妃として宮中に上がり、麗景殿に住んでいた。紅梅は中君を匂宮にと思っている。
一方、北の方亡きあと、紅梅は、蛍兵部卿の宮の未亡人真木柱に通い、今は、晴れて北の方に迎えている。紅梅と真木柱の間には童殿上している子が一人いて、若君と呼ばれている。
真木柱には、故蛍兵部卿との間に、琵琶の上手な宮の御方という連れ子があった。とても恥ずかしがりやで、義父にも容貌をを見せようとしないのだった。異母姉妹は分け隔てなく習いものも一緒にして育てられた。宮の御方はとても控えめな性格で、結婚など考えられなかった。
大納言は庭に美しく咲く紅梅を一枝摘んで和歌につけ、匂宮の気をひこうとして若君に持たせるが、匂宮は気乗りがしない。匂宮は宮の御方の方に興味があった。巻名はこの場面による。
巻名の由来
紅梅大納言(柏木の弟)が右大臣家のあとを継ぎ、庭前に美しく咲く紅梅の一枝をつけて、自分の娘たちに匂宮の気を惹こうとして、匂宮に和歌を送ったことによる。これによりこの巻は大納言とともに紅梅と呼ばれる。
心ありて風の匂はす園の梅にまづ鴬の訪はずやあるべき (紅梅大納言) (43.5)
歌意 そのつもりで梅の香を風が運んでいるのに鶯が訪れないことはないでしょう
紅梅 章立て
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- 43.1 按察使大納言家の家族
- そのころ、按察使大納言と聞こゆるは、故致仕の大臣の二郎なり。
- 43.2 按察使大納言家の三姫君
- 君たち、同じほどに、すぎすぎおとなびたまひぬれば、御裳など着せたてまつりたまふ。
- 43.3 宮の御方の魅力
- 殿は、つれづれなる心地して、西の御方は、一つに慣らひたまひて、いとさうざうしくながめたまふ。東の姫君も、うとうとしくかたみにもてなしたまはで、夜々は一所に大殿籠もり、よろづの御こと習ひ、はかなき御遊びわざをも、こなたを師のやうに思ひきこえてぞ、誰れも習ひ遊びたまひける。
- 43.4 按察使大納言の音楽談義
- 「月ごろ、何となくもの騒がしきほどに、御琴の音をだにうけたまはらで久しうなりはべりにけり。
- 43.5 按察使大納言、匂宮に和歌を贈る
- 若君、内裏へ参らむと、宿直姿にて参りたまへる、わざとうるはしきみづらよりも、いとをかしく見えて、いみじううつくしと思したり。麗景殿れいけいでんに、御ことづけ聞こえたまふ。
- 43.6 匂宮、若君と語る
- 中宮の上の御局より、御宿直所に出でたまふほどなり。
- 43.7 匂宮、宮の御方を思う
- 「今宵は宿直なめり。やがてこなたにを」
と、召し籠めつれば、春宮にもえ参らず、花も恥づかしく思ひぬべく香ばしくて、気近く臥せたまへるを、若き心地には、たぐひなくうれしくなつかしう思ひきこゆ。
- 43.8 按察使大納言と匂宮、和歌を贈答
- これは、昨日の御返りなれば見せたてまつる。
- 43.9 匂宮、宮の御方に執心
- 宮の御方は、もの思し知るほどにねびまさりたまへれば、何ごとも見知り、聞きとどめたまはぬにはあらねど、「 人に見え、世づきたらむありさまは、さらに」と思し離れたり。
紅梅 登場人物
匂宮 におうのみや 今上帝の第三親王 ····· (呼称)匂兵部卿・兵部卿宮・当代の三の宮、
- 紅梅大納言 こうばいのだいなごん 致仕大臣の二男、故柏木の弟 ····· (呼称)按察使大納言・大納言・大納言殿・大納言の君、
- 大君 おおいきみ 紅梅大納言の長女 ····· (呼称)麗景殿・春宮の御方、
- 中君 なかのきみ 紅梅大納言の二女 ····· (呼称)西の御方、
- 真木柱 まきばしら 鬚黒大将の娘、蛍兵部卿宮の北の方 ····· (呼称)北の方・母北の方・母上・上・君、
- 宮の御方 みやのおおんかた 蛍宮と真木柱の娘 ····· (呼称)東の姫君・女君・東・君、
- 夕霧 ゆうぎり 源氏の長男 ····· (呼称)右大臣・大臣、
- 明石の中宮 あかしのちゅうぐう 今上帝の后 ····· (呼称)中宮、
- 今上帝 きんじょうてい 朱雀院の御子 ····· (呼称)内裏、
- 東宮 とうぐう 今上帝の第一親王 ····· (呼称)春宮・宮、
- 大君 おおいきみ ····· (呼称)右大殿の女御
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
公開日2020年8月3日/改定 2023年8月11日