横笛 あらすじ
源氏 49歳 准太上天皇
柏木の一周忌になった。源氏は内心ひそかに薫のぶんとして、黄金百両を別に包んで奉納したので、柏木の父の到仕の太政大臣は訳も知らずその厚志に喜ぶ。
朱雀院は、山寺の周辺の筍や山菜を三の宮に贈る。
夕霧は、柏木の遺志をふまえ、一条院に御息所と落葉の君を訪問する。落葉の君と想夫恋を合奏する。御息所は柏木の遺愛の笛を夕霧に贈る。
邸に戻ると、女房たちが夕霧が落葉の君にご執心の噂話をしていて、北の方の雲居の雁は機嫌が悪くなる。
夕霧は夢に柏木が現れ笛を手に取っているのを見る、笛の相伝は別の人を考えていたらしい。
六条院の源氏を訪問すると、幼子たちがまとわりついてくる。後の、匂い宮と薫であった。一条院へ行ったことを源氏に報告する。笛を譲られた話をすると、その笛の由来を知っている源氏は自分が預かるという。この笛は柏木の子の薫へ伝授すべきものと源氏はひそかに思っている。夕霧は、柏木に何があったのか不審に思うが、それとなく源氏はほのめかすが、明かさないのだった。
巻名の由来
柏木の一周忌も終え、夕霧は一条邸を訪ねる。その時御息所から、柏木ゆかりの笛を贈られる。その笛を試みに吹くと、
露しげきむぐらの宿にいにしへの秋に変はらぬ虫の声かな (一条御息所) (37.7)
歌意 涙にくれて暮らすこの荒れ家に、秋の虫の音と一緒にようこそお出でくださいました
横笛の調べはことに変はらぬをむなしくなりし音こそ尽きせね (夕霧) (37.7)
歌意 横笛の調べは昔と変わりませんが、亡き人の笛の音は尽きずに思いに残るでしょう
横笛 章立て
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- 37.1 柏木一周忌の法要
- 故権大納言のはかなく亡せたまひにし悲しさを、飽かず口惜しきものに、恋ひしのびたまふ人多かり。
- 37.2 朱雀院、女三の宮へ山菜を贈る
- 山の帝は、二の宮も、かく人笑はれなるやうにて眺めたまふなり、入道の宮も、この世の人めかしきかたは、・・・。
- 37.3 若君、竹の子を噛る
- 若君は、乳母のもとに寝たまへりける、起きて這ひ出でたまひて、御袖を引きまつはれたてまつりたまふさま、いとうつくし。
- 37.4 夕霧、一条宮邸を訪問
- 大将の君は、かの今はのとぢめにとどめし一言を、心ひとつに思ひ出でつつ、「いかなりしことぞ」とは、・・・。
37.5 柏木遺愛の琴を弾く - 和琴を引き寄せたまへれば、律に調べられて、いとよく弾きならしたる、人香にしみて、なつかしうおぼゆ。
- 37.6 夕霧、想夫恋を弾く
- 月さし出でて曇りなき空に、羽うち交はす雁がねも、列を離れぬ、うらやましく聞きたまふらむかし。
- 37.7 御息所、夕霧に横笛を贈る
- 「今宵の御好きには、人許しきこえつべくなむありける。
- 37.8 帰宅して、故人を想う
- 「殿に帰りたまへれば、格子など下ろさせて、皆寝たまひにけり。
- 37.9 夢に柏木現れ出る
- すこし寝入りたまへる夢に、かの衛門督、ただありしさまの袿姿にて、かたはらにゐて、この笛を取りて見る。
- 37.10 夕霧、六条院を訪問
- 大将の君も、夢思し出づるに、
「この笛のわづらはしくもあるかな。
- 37.11 源氏の孫君たち、夕霧を奪い合う
- こなたにも、二の宮の、若君とひとつに混じりて遊びたまふ、うつくしみておはしますなりけり。
- 37.12 夕霧、薫をしみじみと見る
- 大将は、この君を「まだえよくも見ぬかな」と思して、御簾の隙よりさし出でたまへるに、花の枝の枯れて落ちたるを取りて、・・・。
- 37.13 夕霧、源氏と対話
- 対へ渡りたまひぬれば、のどやかに御物語など聞こえておはするほどに、日暮れかかりぬ。
- 37.14 笛を源氏に預ける
- 「その笛は、ここに見るべきゆゑあるものなり。
横笛 登場人物
- 光る源氏 ひかるげんじ 四十九歳 ····· (呼称)六条の院・院・大殿・大殿の君、
- 朱雀院 すざくいん 源氏の兄 ····· (呼称)院・山の帝、
- 女三の宮 おんなさんのみや 源氏の正妻 ····· (呼称)入道宮・母宮・宮・君、
- 薫 かおる 柏木と女三宮の密通の子 ····· (呼称)宮の若君・若君・君、
- 匂宮 におうのみや 今上帝の第三親王、明石女御の子 ····· (呼称)三宮、
- 二宮 にのみや 明石女御の子、今上帝の第二親王 ····· (呼称)二宮、
- 夕霧 ゆうぎり 光る源氏の長男 ·····(呼称)大将の君・大将・男君・君、
- 雲井雁 くもいのかり 夕霧の北の方 ····· (呼称)上、
- 致仕の大臣 ちじのおとど 柏木の父 ····· (呼称)父大臣・大臣、
- 四の君 しのきみ 柏木の母 ····· (呼称)上、
- 落葉宮 おちばのみや 朱雀院の第二親王、※柏木の北の方 ····· (呼称)>二の宮・一条の宮・宮、
- 一条御息所 いちじょうのみやすんどころ 落葉の宮の母 ····· (呼称)御息所、
※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。
公開日2023年7月26日