源氏物語  常夏 あらすじ 章立て 登場人物

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常夏 あらすじ

 
源氏 36歳 太政大臣

 夏の猛暑の日、源氏は釣り殿に出て涼んでいる。夕霧や右大臣の子らが集まり、殿上人たちも鴨川の鮎などを持ってやってくる。
 夕暮れになっても誰も帰らない。源氏が玉鬘のいる西の方へ行くと、皆ついてくる、一目噂の姫を見たいのだ。
 雑談で、最近話題になっている右大臣が引き取った近江の君という娘の話になる。柏木が近江の田舎で父内大臣の子だという娘を見つけたのだ。人々は近江の君の破天荒な振舞いに、あきれ、扱いかねていた。内大臣も手を焼いて、弘徽殿女御の里帰りの間、女御に預けて、しつけてもらおうと思っていた。
 源氏は玉鬘に和琴を教えていた。それも玉鬘に近づく口実になった。
 源氏は相変わらず玉鬘への恋慕が止まず、折々に玉鬘を訪れていた。しかし、源氏は自制している。
 内大臣は雲居の雁と夕霧の仲を認めようとも思うが、夕霧が折れてきそうにないので、自分からは言い出せないでいる。意地の張り合いになっている。 常夏とこなつは「なでしこ」の古名です。

巻名の由来

源氏と養女として引き取った玉鬘の相聞。

撫子のとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人や尋ねむ (源氏) (26.5)
歌意 なでしこのような美しいあなたを見たらきっと母上を尋ねたくなるでしょう
山賤の垣ほに生ひし撫子のもとの根ざしを誰れか尋ねむ (玉鬘) (26.5)
歌意 山賤の垣根に生いた撫子のその母のことなど誰が尋ねてくれましょうか
   (註)常夏とこなつは「なでしこ」の古名です。

常夏 章立て

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26.1 六条院釣殿の納涼
 いと暑き日、東の釣殿に出でたまひて涼みたまふ。
26.2 近江の君の噂
「いかで聞きしことぞや、大臣のほか腹の娘尋ね出でて、かしづきたまふなるとまねぶ人ありしかば、まことにや」 と、弁少将に問ひたまへば、 「ことことしく、さまで言ひなすべきことにもはべらざりけるを。
25.3 源氏、玉鬘を訪う
夕つけゆく風、いと涼しくて、帰り憂く若き人びとは思ひたり。
26.4 源氏、玉鬘と和琴について語る
 月もなきころなれば、燈籠に御殿油参れり。
26.5 源氏、玉鬘と和歌を唱和
人びと近くさぶらへば、例の戯れごともえ聞こえたまはで、 「撫子を飽かでも、この人びとの立ち去りぬるかな。
26.6 源氏、玉鬘への恋慕に苦悩
渡りたまふことも、あまりうちしきり、人の見たてまつり咎むべきほどは、心の鬼に思しとどめて、さるべきことをし出でて、御文の通はぬ折なし。ただこの御ことのみ、明け暮れ御心にはかかりたり。
26.7 玉鬘の噂
内の大殿は、この今の御女むすめのことを、 「殿の人も許さず、軽み言ひ、世にもほきたることと誹りきこゆ」と、聞きたまふに、 少将の、ことのついでに、太政大臣の「さることや」ととぶらひたまひしこと、語りきこゆれば、 「さかし。
26.8 内大臣、雲井雁を訪う
とかく思しめぐらすままに、ゆくりもなく軽らかにはひ渡りたまへり。
26.9 内大臣、近江君の処遇に苦慮
 大臣、この北の対の今姫君を、 「いかにせむ。さかしらに迎へ率て来て。人かく誹るとて、返し送らむも、いと軽々しく、もの狂ほしきやうなり。
26.10 内大臣、近江君を訪う
やがて、この御方のたよりに、たたずみおはして、のぞきたまへば、簾高くおし張りて、五節の君とて、されたる若人のあると、双六をぞ打ちたまふ。手をいと切におしもみて、 「せうさい、せうさい」 とこふ声ぞ、いと舌疾どきや。
26.11 近江君の性情
「舌の本性にこそははべらめ。
26.12 近江君、血筋を誇りに思う
よき四位五位たちの、いつききこえて、 うち身じろきたまふにも、いといかめしき御勢ひなるを見送りきこえて、 「いで、あな、めでたのわが親や。かかりける胤ながら、あやしき小家に生ひ出でけること」 とのたまふ。
26.13 近江君の手紙
「さて、女御殿に参れとのたまひつるを、しぶしぶなるさまならば、ものしくもこそ思せ。夜さりまうでむ。大臣の君、天下に思すとも、この御方々のすげなくしたまはむには、殿のうちには立てりなむはや」 とのたまふ。
26.14 女御の返事
樋洗童しも、いと馴れてきよげなる、今参りなりけり。

登場人物

  • 光る源氏  ひかるげんじ 三十六歳 ·····(呼称)大臣・太政大臣、
  • 夕霧  ゆうぎり 光る源氏の長男 ·····(呼称)中将・中将の君、
  • 紫の上  むらさきのうえ 源氏の正妻 ·····(呼称)春の上、
  • 玉鬘  たまかづら 内大臣の娘 ·····(呼称)対の姫君・西の対・姫君・撫子・今姫君・君、
  • 内大臣  ないだいじん  ·····(呼称)内の大臣・内の大殿・大臣・大臣の君
  • 蛍兵部卿宮  ほたるひょうぶきょうのみや  ·····(呼称)兵部卿宮・宮・親王
  • 柏木  かしわぎ 内大臣の長男  ·····(呼称)右中将・中将の朝臣・中将
  • 明石御方  あかしのおほんかた  ····· (呼称)明石のおもと
  • 明石姫君  あかしのひめぎみ  ·····(呼称)后がねの姫君・君
  • 鬚黒大将  ひげくろだいしょう  ·····(呼称)大将
  • 近江の君  おうみのきみ 内大臣の娘  ·····(呼称)今の御女・北の対の今姫君・御方・女、
  • 弘徽殿女御  こきでんのにょうご  ·····(呼称)女御の御方・女御の君・女御殿・女御・御方
  • ※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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    源氏物語  常夏 あらすじ 章立て 登場人物

    公開日2019年7月27日/改定2023年5月2日