源氏物語  松風 あらすじ 章立て 登場人物

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松風 あらすじ

源氏 31歳 内大臣

 源氏は、二条院の東院を造営している。花散里はそこに移ってもらう予定であった。部屋もたくさん用意した。
 明石の君と姫君を明石に残したままなので、都に来るように勧めるが、明石の君はあまりの身分の違いに躊躇して決心がつかない。結局、姫君の養育も考え、上京することになった。
 入道は、大井川のほとりに、母尼君の祖父中務の宮の別邸があって放置していたので、そこを改装して住めるように手配した。入道は明石に残り、尼君と明石の君と姫君の3人が上京して、大井川のほとりに住んだ。
 源氏は、大井への通いは容易ではなく、嵯峨野に造営中の御堂の監督、また近くに桂の院といって、別荘もあった。源氏はそれらの造作を監督する口実で、大井を月二回程訪れた。紫の上の機嫌は悪く、明石の君の上京を説明し、姫君を養女としてひきとって養育を頼むことで、ようやく機嫌を直すのだった。

巻名の由来

明石の君の母尼の歌。入道と別れ、明石から娘・孫と三人で上京し、大井の山荘に落ち着くが、

身を変へて一人帰れる山里に聞きしに似たる松風ぞ吹く(明石の尼君)  (18.7)
歌意 尼姿になり入道と別れひとり山里に帰ってきたら明石の浦と同じような松風が吹いている。

松風 章立て

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18.1 二条東院の完成、明石に上洛を促す
東の院造りたてて、花散里と聞こえし、移ろはしたまふ。
18.2 明石方、大堰の山荘を修理
昔、母君の御祖父、中務宮なかづかさのみやと聞こえけるが領じたまひける所、大堰川おおいがわのわたりにありけるを、その御後、はかばかしうあひ継ぐ人もなくて、年ごろ荒れまどふを思ひ出でて、かの時より伝はりて宿守のやうにてある人を呼び取りて語らふ。
18.3 惟光を大堰に派遣
かやうに思ひ寄るらむとも知りたまはで、上らむことをもの憂がるも、心得ず思し、「若君の、さてつくづくとものしたまふを、後の世に人の言ひ伝へむ、今一際、人悪ろき疵にや」と思ほすに、造り出でてぞ、「しかしかの所をなむ思ひ出でたる」と聞こえさせける。「人に交じらはむことを苦しげにのみものするは、かく思ふなりけり」と心得たまふ。
18.4 腹心の家来を明石に派遣
親しき人びと、いみじう忍びて下し遣はす。
18.5 老夫婦、父娘の別れの歌
秋のころほひなれば、もののあはれ取り重ねたる心地して、その日とある暁に、秋風涼しくて、虫の音もとりあへぬに、海の方を見出だしてゐたるに、入道、例の、後夜より深う起きて、鼻すすりうちして、行なひいましたり。いみじう言忌すれど、誰も誰もいとしのびがたし。
18.6 明石入道の別離の詞
「世の中を捨てはじめしに、かかる人の国に思ひ下りはべりしことども、ただ君の御ためと、思ふやうに明け暮れの御かしづきも心にかなふやうもやと、思ひたまへ立ちしかど、身のつたなかりける際の思ひ知らるること多かりしかば、さらに、都に帰りて、古受領の沈めるたぐひにて、貧しき家の蓬葎、元のありさま改むることもなきものから、公私に、をこがましき名を広めて、親の御なき影を恥づかしめむことのいみじさになむ、やがて世を捨てつる門出なりけりと人にも知られにしを、その方につけては、よう思ひ放ちてけりと思ひはべるに、君のやうやう大人びたまひ、もの思ほし知るべきに添へては、など、かう口惜しき世界にて錦を隠しきこゆらむと、心の闇晴れ間なく嘆きわたりはべりしままに、仏神を頼みきこえて、さりとも、かうつたなき身に引かれて、山賤の庵には混じりたまはじ、と思ふ心一つを頼みはべりしに、思ひ寄りがたくて、うれしきことどもを見たてまつりそめても、なかなか身のほどを、とざまかうざまに悲しう嘆きはべりつれど、若君のかう出でおはしましたる御宿世の頼もしさに、かかる渚に月日を過ぐしたまはむも、いとかたじけなう、契りことにおぼえたまへば、見たてまつらざらむ心惑ひは、静めがたけれど、この身は長く世を捨てし心はべり。君達は、世を照らしたまふべき光しるければ、しばし、かかる山賤の心を乱りたまふばかりの御契りこそはありけめ。天に生まるる人の、あやしき三つの途に帰るらむ一時に思ひなずらへて、今日、長く別れたてまつりぬ。命尽きぬと聞こしめすとも、後のこと思しいとなむな。
18.7  明石一行の上洛
 御車は、あまた続けむも所狭く、片へづつ分けむもわづらはしとて、御供の人びとも、あながちに隠ろへ忍ぶれば、舟にて忍びやかにと定めたり。辰の時に舟出したまふ。昔の人もあはれと言ひける浦の朝霧隔たりゆくままに、いともの悲しくて、入道は、心澄み果つまじく、あくがれ眺めゐたり。
18.8 大堰山荘での生活始まる
家のさまもおもしろうて、年ごろ経つる海づらにおぼえたれば、所変へたる心地もせず。
18.9 大堰山荘訪問の暇乞い
かやうにものはかなくて明かし暮らすに、大臣、なかなか静心なく思さるれば、人目をもえ憚りあへたまはで、渡りたまふを、女君は、かくなむとたしかに知らせたてまつりたまはざりけるを、例の、聞きもや合はせたまふとて、消息聞こえたまふ。
18.10 源氏と明石の再会
 忍びやかに、御前疎きは混ぜで、御心づかひして渡りたまひぬ。
18.11 源氏、大堰山荘で寛ぐ
繕ふべき所、所の預かり、今加へたる家司などに仰せらる。
18.12 嵯峨御堂に出向き大堰山荘に宿泊ぐ
御寺に渡りたまうて、月ごとの十四、五日、晦日の日、行はるべき普賢講、阿弥陀、釈迦の念仏の三昧をばさるものにて、またまた加へ行はせたまふべきことなど、定め置かせたまふ。
18.13 大堰山荘を出て桂院に向かう
またの日は京へ帰らせたまふべければ、すこし大殿籠もり過ぐして、やがてこれより出でたまふべきを、桂の院に人びと多く参り集ひて、ここにも殿上人あまた参りたり。
18.14 院に到着、饗宴始まる
いとよそほしくさし歩みたまふほど、かしかましう追ひ払ひて、御車の尻に、 頭中将、兵衛督ひょうえのかみ乗せたまふ。
18.15 饗宴の最中に勅使来訪
 おのおの絶句など作りわたして、月はなやかにさし出づるほどに、大御遊び始まりて、いと今めかし。
18.16 二条院に帰邸
殿におはして、とばかりうち休みたまふ。
18.17 源氏、紫の君に姫君を養女とする件を相談
その夜は、内裏にもさぶらひたまふべけれど、解けざりつる御けしきとりに、夜更けぬれど、まかでたまひぬ。

松風 登場人物

  • 光る源氏  ひかるげんじ 三十一歳 ····· (呼称)内大臣・大臣・大殿・殿
  • 明石入道  あかしのにゅうどう  明石の君の父親 ····· (呼称)入道
  • 明石の尼君  あかしのあまぎみ  明石の君の母親 ····· (呼称)母君・尼君
  • 明石の君  あかしのきみ  源氏の妻 ····· (呼称)明石の御方・明石・御方・女君・女・君
  • 明石の姫君  あかしひめぎみ  光る源氏の娘 ····· (呼称)若君
  • 紫の上  むらさきのうえ 源氏の正妻 ····· (呼称)女君

※ このページは、渋谷栄一氏の源氏物語の世界によっています。人物の紹介、見出し区分等すべて、氏のサイトからいただき、そのまま載せました。ただしあらすじは自前。氏の驚くべき労作に感謝します。

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公開日2018年//月//日/ 改定2023年3月21日