神はその土地と結びついていた
神はなぜアブラハムに全世界ではなく、ある特定の場所を与えたのだろう。
「古代文明における宗教は、国や国境を越えるようなものではなかったのです」とエリーザーは言った。「宗教はその土地と密接に結びついていました。
バビロニアの神はエジプトの神とも、へブロンの神とも違う。神を普遍的な存在にしたのはユダヤ教、そしてのちのキリスト教とイスラム教です」
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「まず受け入れませんね。この契約は一民族とその神のものです。他民族には彼ら自身の神がいた。そのため、都市国家は覇権を求めて闘争を繰り返しました。
子供っぽい言い方をすれば『うちの神様のほうがおまえんとこの神様よりえらいぞ』というような。だからこそ契約がこれほど重要なのです。また、契約は
その関係が永続的であることを保証します。つまり、自分の父親が神様と契約を結んだ、だから自分にもそれが適用されるということです。・・・」
『聖書を歩く』(原書房 ブルース・ファイラー著 黒川由美訳 2004年9月)